断片日記

断片と告知

『市場界隈』『漱石全集を買った日』『銭湯断片日記』

飲み友達でもあり、『銭湯断片日記』のなかにたびたび登場する、はっちこと橋本くんの新刊『市場界隈』が今月5月末に発売されます。発売に合わせ、千駄木往来堂書店でトークショーが開かれます。橋本くんにお誘いいただき一緒に話すことになりました。

橋本くんの話題の本『ドライブイン探訪』そして新しく出る『市場界隈』のどちらも、現地に何度も足を運び、資料を探し、粘り強く話を聞く橋本くんにしか書けない本です。

ドライブイン牧志公設市場、銭湯という同じ消えていく景色を見つめながら、丹念に取材を重ねる橋本くんと、ただ風呂に入り酒を飲み歩くをひたすら繰り返し描写するわたしと、どういうトークになるのか、とても楽しみです。

京都の古本屋・善行堂の山本善行さんと清水裕也さんの古本対談集『漱石全集を買った日』の装画にわたしの絵を使っていただきました。この絵は京都での個展「沼日」で発表した絵のひとつです。『漱石全集を買った日』は、善行堂さんはじめ各地の古本屋、新刊本屋で取り扱いがあります。うれしいです。

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漱石全集を買った日』夏葉社刊

5月4日現在、『銭湯断片日記』は001から526までの限定部数入り検印紙のものはブックギャラリーポポタム(西池袋)と火星の庭(仙台)で、現物支給の文字入り検印紙のものは古書往来座(南池袋)で取り扱いがあります。ポポタムでは通販も可能です。

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『銭湯断片日記』龜鳴屋刊

 

 

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『銭湯断片日記』できあがりました。

4月21、22日の2日間、金沢の龜鳴屋さんを訪ねました。わたしの本『銭湯断片日記』の本体が出来上がり、残りの貼り込み作業をするためです。

各章扉にはその年に描いた絵を9年分の9枚貼り、奥付には検印紙を1枚貼り、そして付録の冊子を1枚ずつ差し込んでいきます。

1日目は4人で、2日目は3人で作業をし、出来上がったのは140冊。思った以上に時間のかかる作業でした。

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『銭湯断片日記』の本体と、各扉に貼る小さな絵。

 

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龜鳴屋での作業風景

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章扉

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スピンは銭湯ではお馴染みのケロリン桶の色、明るい黄色。

 

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奥付の検印紙は、銭湯に行くたびに飲んでいるビール、の栓抜きのデザイン。数字は1冊ずつ手描きです。

 

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付録の冊子。谷根千ウロウロさん撮影、谷中「世界湯」の写真。

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付録の冊子。石神井書林内堀弘さんの書く「武藤さんの字」。


こうして『銭湯断片日記』出来上がりました。本文512ページ、分厚いので自立します。

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武藤良子著『銭湯断片日記』龜鳴屋

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 初売りは、トークショーに合わせて4月25日ブックギャラリーポポタムにて。

ふだん本屋には並ばない龜鳴屋の既刊本も合わせて展示販売いたします。この機会をお見逃しなく。
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夕方のチャーハン

大学の食堂で夕方4時間アルバイトをしている。絵だけでは食えず、金に困ってはじめた仕事だが、腹を減らして駆け込んでくる学生たちにカレーをよそい、ラーメンを茹でながら、使われた食器を洗いかたしていく作業は性に合っていたようで、気づけば4年経っていた。

日替わり定食などメニューは多いが、カレーやラーメンなどの定番もの以外、夕方にはほとんど売り切れとなる。遅い時間に食堂に来る学生のために、夕方独自のメニューがあればと声があがり、おしるこ、かき氷、ローストビーフ丼など、甘いものからご飯ものまで試した結果、評判がよかったのがチャーハンだった。

夕方4時近くになると、店長がチャーハンを作りはじめる。白飯、ネギ、卵、チャーシューの切れっ端を大きな鍋でぐわっと炒める。油と醤油の焦げる匂いがして、黒胡椒をきかせたチャーハンがあっという間に出来上がる。出来上がったチャーハンをパットに入れ、ラップをかけて温蔵庫で保存する。準備が出来たらショーケースに見本を出す。チャーハン200円、大盛りは50円増し。お好みで紅しょうがもつける。

はじめにショーケースのチャーハンに気づいたのは、よく食堂に来る、常連の学生たちだった。

このチャーハンってどの食券買えばいいの?

200円分の食券ならなんでもいいよ。

急ごしらえの食券を受け取り、温蔵庫から出したチャーハンを丸い型にはめ、中華模様のプラスティックの皿にかぽっと出す。スープもサラダもつかないが、200円という安さと、居酒屋の厨房仕込みだという濃い味付けは学生に受け、よそう手間の少なさと洗いものの楽さでアルバイトからは受けた。

夕方のチャーハンは常連たちの口から広まり、しばらくすると、まだかまだかと学生たちが、夕方の食堂をのぞくようになった。

200円券と50円券1枚は当たり前、50円券2枚で超大盛りにして、と言う男子学生たち。

ダイエットをしているのでご飯は少なめにと言う女子学生たちも、チャーハンだけは何も言わずにきっちり一人前食べる。

食堂のカウンターに200円の食券の列が出来る。大きなパットいっぱいのチャーハンは、1時間もしないうちにたいてい売り切れになる。間に合わなかった学生たちが、もうチャーハンないのかよー、と嘆きの声をあげる。

来年度、春からこの大学の仕組みが変わるから、食堂もどうなるかわからないよ、とだいぶ前から言われていたが、年明けあっけなく、夕方の営業は来週で最後だからと、4年間の終わりを告げられた。

毎日のように来ていた彼らに、夕方の食堂と、チャーハンの終わりを告げたいが、年明けの大学はまだ学生の姿も少なく、彼らの顔もあまり見ない。それでもチャーハンだけは、いつの間にか空になる。

終りを告げられないままの最後の日。食べそびれた学生がいないよう、せめていつもの倍作りましょうよ。店長にそう提案すると、いつもより大きな鍋で、いつもの倍のチャーハンを作ってくれる。これだけあれば間に合うね、と言い合いながら。

いつも通り、夕方4時にチャーハンの見本をショーケースに出す。200円の食券の列を待ちわびる。

大学の授業の関係か、最後の日、チャーハンを食べに来たのはたった3人だけだった。

 

ポポタム14周年記念包装紙

西池袋にあるブックギャラリーポポタムが、2019年4月1日で14周年をむかえます。14周年を記念した、わたしがイラストと文字を描いた、ポポタムの包装紙が出来上がりました。デザインは横山雄さん。4月1日の記念日より、ポポタムでお買い上げの商品を包みます。巻けば包装紙に、折ればブックカバーに、貼ればポスターになります。

包装紙は、無くなり次第サービス終了となります。

4月25、26日開催の『銭湯断片日記』トークショーご参加の方には必ず差し上げます。

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ポポタム14周年記念包装紙 絵と字:武藤良子 デザイン:横山雄

 

銭湯断片日記

2007年から書き続けたブログ「m.r.factory」を、ブログ移転に伴い「断片日記」と名前を変えました。こちらの「断片日記」も、引き続き、読んでいただけたらうれしいです。

そして、10年以上書き続けた「m.r.factory」の中から、銭湯について書いた文章のみをまとめたものが、この春、1冊の本になります。

書名は、『銭湯断片日記』。

版元は、室生犀星の本でもお世話になりました、金沢の龜鳴屋さんです。

本についての詳細は、来月半ばごろには発表できると思います。

発売を記念して、ブックギャラリーポポタムでトークショーをおこないます。本のこと銭湯のこと、そして龜鳴屋さんについて、楽しく話せたらと思います。当日、登壇は断られましたが、トーク会場に龜鳴屋の勝井さんも来られる予定です。たくさんのご予約、お待ちしております。 

 

 ***武藤良子『銭湯断片日記』刊行記念トークショー***

■日時

4月25日(木)7:30pm〜9:00pm オープニングパーティートーク
ゲスト:内堀弘石神井書林)×武藤良子
入場料 1500円+税(1ドリンク付)定員20名(要・予約)

4月26日(金)7:30pm〜9:00pm トークイベント
ゲスト:南陀楼綾繁×武藤良子
入場料 1500円+税(1ドリンク付) 定員20名(要・予約)

4月27日(土)まるまる一日サイン会
入場無料

いずれも店舗営業時間は1:00pm〜7:00pmになります。

■予約

トークショーの予約は、ブックギャラリーポポタムまで。

電話かメール、ポポタムの通販サイトからもご予約できます。

03-5952-0114
popotame@kiwi.ne.jp 

武藤良子「断片日記」トークイベント | Books&Gallery POPOTAME tokyo

■会場

ブックギャラリーポポタム

171-0021 東京都豊島区西池袋2-15-17
03-5952-0114(電話のみ)
popotame@kiwi.ne.jp 

武藤良子『銭湯断片日記』刊行記念イベント | ブックギャラリーポポタム|東京目白にある本とギャラリーのお店

 

 

 

 

引っ越しました

以前使っていたブログ・はてなダイアリーのサービスが終了し、はてなブログに引っ越ししました。

こちらで書き続けていきます。

 以前のブログもこちらで読めます。

沖縄の市場の古本屋ウララでの展示は2月14日まで。明日、明後日の二日間です。

犀星スタイル沖縄スタイル

沖縄の市場の古本屋ウララで個展をします。
2016年発行の『をみなごのための室生家の料理集』、2018年発行の『犀星スタイル』は、どちらも室生犀星の孫、室生洲々子さんが編集し、龜鳴屋が発行した小さな冊子です。わたしはその二冊に挿絵を描かせていただきました。『をみなごのための室生家の料理集』は室生家の料理を、『犀星スタイル』は犀星の暮らし方へのこだわりを紹介しています。二冊に描いた挿絵のなかから選んだ六点と、今回展示をさせていただく市場の古本屋ウララの店主、宇田智子さんが書いた沖縄の掌編に二点、合わせて八点の絵をウララの店内に展示します。
ウララでの展示は、2012年1月の『もの食う本』原画展以来です。今回の展示は、「NAHA ART WALK 2019」への参加企画と、犀星はアイドルです、という宇田さんのことばから実現しました。『をみなごのための室生家の料理集』、『犀星スタイル』、そして龜鳴屋さんが発行している本のいくつかを、今回ウララで販売します。市場の古本屋ウララへ、ぜひお立ち寄りください。

犀星スタイル沖縄スタイル
■会期
2019年2月2日〜2月14日
11時〜18時 日、火休み
■場所
市場の古本屋ウララ
〒900-0013
沖縄県那覇市牧志3-3-1
市場の古本屋ウララのブログ:武藤良子個展 犀星スタイル 沖縄スタイル:市場の古本屋ウララ