断片日記

断片と告知

2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

狐に騙された話

まだ日の高い時間だった。アトリエで絵を描いていると、携帯電話が鳴った。自宅のパソコンにきたメールの転送を知らせる着信音だった。見ると、先月仕事をした珍しい名字のデザイナーさんからで、原画返却の宅急便の日時を問うメールだった。携帯電話からそ…

流れる溜める

湯につかり、湯船のへりに頭をあずける。目の先にあるはずの、風呂場の換気窓、壁や天井のタイルはなぜか見えず、もしかすると目をつぶっているのか、あけていてもどこかを勝手に歩き回っているのか、だから湯に体をあずけるとよく言葉がつながるのか。湯か…

明治通り

歩いていると、よく言葉がつながる。つながった言葉を、後で書こう、と、酒を飲んですべて忘れる。歩く道はどこでもいいが、明治通りをよく歩く。雑司ヶ谷から、新宿の画材屋・世界堂まで、歌舞伎町そばの飲み屋まで。新宿の花園神社向いにたつ、花園饅頭の…

隣りの引越し

ある日、アトリエの戸が叩かれ、出ると隣りの青年だった。彼が所属している劇団のチラシと、田舎から送られてきたというじゃが芋とパッションフルーツを手に、ぽつんと立っていた。引越しの挨拶で見たときから、きれいな顔形をしている、と思っていたが、役…