2017-01-01から1年間の記事一覧
ときどき知人の古本屋の手伝いをしている。主な手伝いは買取で、古本屋とともに客の家に車で出向き、客が売りたいという本の版型を揃え、縛りやすい高さに積みなおし、縛られた本の山を車に運び込んでいく。単純な力作業だが本の量が多いときは重宝がられて…
雑司ヶ谷で生まれ育ったわたしの、知らない雑司ヶ谷を知る人たちがいる。鬼子母神通りで開催される古本フリマみちくさ市で知り合った、石丸元章さんとピスケンさんだ。石丸さんは自身の薬物使用体験を基にした私小説『SPEEDスピード』や、ハンター・S・トン…
日雇い労働者の町で古本を売らないかと誘われ、八月末、横浜寿町に乗り込んだ。寿町の真ん中に建つ寿町労働総合福祉会館の建て替え工事のため、この夏だけ空いた巨大な更地に水族館劇場が芝居小屋を建てている。水族館劇場の本公演は九月一日からだが、八月…
居間兼台所の座卓に座り、テレビを見たり、昼飯を食べたり。座卓の正面の窓からは、お向かいの白い戸建が二軒と、二軒の間にさらに向こうの二階建てのアパートが見える。座って窓を見上げているので、どちらの建物も二階部分しかこちらからは見えない。 ある…
数年前、古本屋を営む知人の車に乗せてもらい、タテバと呼ばれる場所に連れて行ってもらったことがある。車を西に走らせ数十分、豊島区の端っこなのか、それとも練馬か板橋辺りなのか、住宅地のなかに唐突にあった。道の向かいは学校の校庭で、タテバの横は…
あれは山中湖の近くにあった、父の勤めていた会社の保養所だったと思う。子どものころ、家族旅行で何度か訪れたはずだが、覚えていることはそう多くない。湖畔沿いの売店の大きな水槽につかって売っていた青りんごの甘酸っぱい固さと、夜、保養所の窓から見…
学生時代から三十代半ばまで、自分の部屋で絵を描いていた。中学生のころ建替えた家の、2階の端にあるわたしの部屋だ。窓はふたつ。ひとつはいつも閉め切りで、もうひとつは開けたり閉めたり。窓の前には目隠しがわりの木が一本。ときどき鳩が巣をつくっては…
久しぶりに仙台へ行った。最後に訪れたのは2015年の6月だから、2年ぶりの再訪になる。2009年から15年のあいだ、サンモール一番町商店街で行なわれていたBook! Book! Sendaiでの古本市に参加するため、毎年6月はわめぞの有志で仙台を訪れていた。昼は古本市、…
石神井書林の内堀さんがよく行く映画館にはシニア割引がある。60歳を越えると1800円の映画代が1000円になる。1800円が1300円くらいの割引ならわざわざ言わないんだけど1000円じゃなぁ、と内堀さんは窓口で60歳ですと申し出る。それが一度も身分証明書を見せ…
昨年の12月、飲み友達が死んだ。死んだからって、いい人だったよねと、あれやこれやを片付けお仕舞いにしたくなかった。本が好きで、酒が好きで、不良で、格好付けで、夢見がちな男だから好きになり、本が好きで、酒が好きで、不良で、格好付けで、夢見がち…
分け目Tシャツの通販がはじまりました。Tシャツの色、サイズ、インクの色を選べば、あなただけの分け目Tシャツが作れます。みちくさ市と同時開催だった今年の妄想ロックフェス会場では、シルバーのインクで銀髪に刷るのが好評でした。あなた好みの分け目、ぜ…
今年のはじめ、チラシの肖像画を描いた縁で、東洋大学で行われた野溝七生子の講演会へ行った。女性が学校に通うことはおろか、本を読むことさえ生意気だと言われていた時代に、東洋大学に進んだ野溝七生子の一生を、代表作『梔子』の主人公と重ねた幼少時代…
架空のバンドを妄想し、架空のバンドTシャツをデザイン販売までしてしまう大人のイケナイ楽しみ、妄想ロックフェス。今年は鬼子母神通りみちくさ市当日に、会場のひとつ、キク薬局横ガレージで開催いたします。わたしが妄想したバンドは「分け目」。Tシャツ…
絵の展示でお世話になっているブックギャラリーポポタムの大林さんと古本屋の石神井書林の内堀さんは、子どもたちが同じ時期に同じ保育所に通っていた父兄仲間だ。内堀さんが発行する次号の古書目録に題字を描いて欲しいと、大林さん経由で内堀さんから連絡…