断片日記

断片と告知

ヤモリ

風呂のタイルの目地の部分に茶色いシミが。いやカビか。と近寄ってよく見ると、私の小指よりも小さく細い、子どものヤモリ。小さいくせに、指の先、尻尾の先まで、きちんとヤモリの形をしている。ビーズのようなキャビアのような、真黒な小さな目がくりくりしているのがかわいらしい。これから風呂に入るんですよ、石鹸も使うんですよ、知らないうちに踏んづけるかもしれません、そう声をかけて、指先にヤモリをのせ、風呂の窓から外に出す。小さな手の、小さな指が、私の大きな指をつかむ。そのはかなく頼りない感触の中に、生きているものの力強さをなぜか感じる。