断片日記

断片と告知

末広湯

要町の交差点の、要町通りから1本入った路地を、千川方面に向かって歩く。住宅街の中を抜け、銭湯「健康ランド末広湯」に行く。ビルの1階にある銭湯。入るとソファとテーブルが置かれるロビーがあり、金魚のようで金魚でない熱帯の魚らしきものが泳ぐ水槽がある。ロビーの奥にはフロントがあり、フロントを真ん中に左が女湯の入り口になっている。女湯の入り口そばにも水槽がふたつあり、ひとつには金魚、もうひとつには何かの稚魚が泳いでいる。
脱衣所は入り組んでいる。入ると洗面台スペース、露天風呂の入り口、洗い場の入り口、トイレ、2階の休憩所にのぼる階段、がロッカーの置かれる脱衣スペースを中心にして散らばっている。2階の休憩所にのぼる階段には、休憩所は別料金のサウナ利用者のみ、と書かれた紙が貼られている。恐る恐る階段の下から覗けば、2階からは楽しげな笑い声が響いてきて、羨ましく思う。
洗い場に入る。今までありそうでなかったカランを目の前にして、しばし使い方に迷う。カランもシャワーも、ボタンを押すと数十秒だけ勝手にお湯が出続ける仕組みになっている。水温調節は出来るが、出したい分以上にお湯が出るのに閉口する。湯船の数は多い。左手の壁沿いに大きな湯船があり、半分が寝ジェット、もう半分が白湯と表示のある普通のお湯、になっている。正面の壁沿いには、左から、ミクロの泡風呂、座ジェット、薬湯、水風呂がある。水風呂は、水というよりもぬるま湯で、30度から32度くらいとの表示がある。この水風呂とは別に、左手と正面にある湯船の間に奥に行く通路があり、入ると正面には冷たい水風呂、その右手にサウナ、左手に露天風呂がある。露天風呂は、脱衣所と洗い場とふたつ入り口があり、どちらからも入れるようになっている。露天風呂は小さな岩風呂で、端っこには打たせ湯もある。外気は入ってくるが、壁も天井も覆われて外が見えない、都心風露天風呂である。湯船は数も多いがサイズも大きくゆったりしている。「大塚記念湯」を思い出すが、こちらのほうがより過剰である。正面の壁は全面透明のガラス窓で覆われ、ガラス窓の奥の壁にはタイルのモザイク絵がある。モザイク絵は、東京都民ならばお馴染みの、小島功が描く河童の絵で、実際に小島功が手がけたかどうかは気になるところだが、見ていると河童のバッジを思い出し、懐かしくなる。
健康ランド末広湯」を出て少し歩くと、古い木造の、北側が全面ガラス窓の家を見つける。今も池袋周辺に点々と残る、池袋モンパルナスの頃のアトリエ住居だ。所々修復され、丁寧に使われ、今もなお現役な姿を見ると、まだどこかに池袋モンパルナスの頃の熱気が残っているような気がして、うれしくなる。
健康ランド末広湯