散歩から帰った母が、鬼子母神で「ごくせん」のロケしてたわよ、と言う。
アトリエに行く途中、横断歩道の真中に、きらりと光るものが落ちている。子供が落としたのか。車にひかれたのか。表面がぼろぼろの傷ついたビー玉。そのままにしておくのはなんだか悲しくて、思わず拾う。ビー玉を左手に握り締めながらアトリエに向かう。アトリエの机の上に、小さなビー玉を、ことん、と置く。しばらくここにいるといいよ。飽きたらまたどこかに転がりにいけばいいさ。そんなことを思う。
銭湯「小松湯」へ行く。銭湯マップに掲載されていたのは、洗い場の写真で、よくある構図なのだけれど、よく見ると島カランが3本もある。1本、2本の島カランはよく見るけれど、3本というのはお目にかかったことがない。古くて大きい銭湯に違いない。そう思って、ここに決めた。池袋の北口から平和モールを抜けて、川越街道を越えて、古い商店街をしばらく歩く。古い洋装店、木造の文房具屋、スプライトの看板をしょった青果店がある。右手に年季の入った雑居ビルが見えてくる。その1階に「小松湯」がある。フロントで入浴料を払う。450円出してお釣りが返ってこないと思ったら、昨日から入浴料が値上げされたらしい。430円から450円へ。たった20円なのに、高く感じる。女湯ののれんをくぐり、脱衣所へ。横に広い。ロッカーの数も多い。洗い場も広い。写真どおり、島からんも3本ある。からんの数を数えてみると、全部で48からんある。そして湯船も5つある。泡、ジェット、薬草、水、熱め、とある。ペンキ絵は男湯と女湯をまたぐようにしてある小さな富士山の図で、その長く伸びる裾野の下にこの5つの湯船が並んでいる。天井は銀色で、蛇腹折りのようにジグザグしている。ビルの1階なのに、とにかく広い。とにかく古い。炭鉱の共同浴場はこんな感じではなかったか、と行ったこともないのに思う。ごんごん回る扇風機で体を乾かし、外に出る。夜の空気が心地良い。ほてった体をさらさらと撫でていく。小松湯