断片日記

断片と告知

バイバイ、レンゲ畑

「日和下駄」。「今日東京の表通は銀座より日本橋通は勿論上野の広小路浅草の駒方通を始めとして到処西洋まがひの建築物」と荷風が批判したまがい物の西洋建築も好きなら、「裏町を行かう、裏道を歩まう」と荷風が愛した隅田川沿いの入り組んだ路地もそこに建つ長屋も等しく好きなのだ、わたしは。姿形、様式に関係なく、時代を経た古いもの、消えていくもの、なくなりそうなもの、がどうにも好きでどうにも節操がなくて困る。生前わがままだった奴が死んだ途端に良い人になる通夜の席の会話と同じではないか、と反省するのだが、やはり壊されていくものを見ると、惜しくて悲しくてたまらない。青山代官山江戸川橋大塚の同潤会アパートが壊されたとき、浅草の常盤座と周辺の劇場が壊されたとき、それ以外のわたしが好きだった建物が街がごっそり無くなったとき、わたしはしばらくその街に近寄るのをやめる。なくなった景色を見るのも嫌なら、新しく出来た景色を見るのも嫌だからだ。何が出来ても昔のほうが良かったと、思ってしまうのは、なくなっていった2度と会えない景色の強みか。そんなことを考えていると建てては壊す東京の街を歩けなくなり、そんなときに出合ったのが大島弓子の漫画「四月怪談」でした、という話をミニコミ「HB」7号に書きました。良かったら。
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