断片日記

断片と告知

書くと描く

どういう文章が好きかわかるほど、本を読んでこなかった。文章を書くときに、こう書きたい、と目指すものが何もなかった。それでも人目にふれる場所に書くのだから、発表するのだから、つまらないものは書きたくなかった。嫌いな言葉や言い回しを使わなければ、紙の上には自分の好きな言葉しか残らないはず。単純にそう考えて、ブログを書きはじめた。
うれしい、悲しい、感動した、そんな言葉を使わなくとも、体験したことをきちんと言葉に出来れば、その場にいた自分と同じ感情が読み手にもわくはず。定型文のような言い回しを何度でも使うのは、楽だから、考えるのが面倒だから。難しい言葉をぽんと置き去りにするのは、優しく言い換えるすべを知らないだけ。書く前に腹が立っていた書き手の怠慢は、書き続けるうちに、全部自分に返ってきた。
常に、話したり、読んだり、聞いたりできる言葉は、絵よりもだいぶ日常に近い。日々のこと、気持ち、考え、を伝えるとき、絵よりも言葉のほうが、書き手と読み手の誤差が少ない。もっときちんと書きさえすれば、もしかしたら誤差をなくすことさえ出来るかもしれない。
絵とは違う表現ができる言葉というものを、書きはじめる前よりもずっと好きになっている自分に気づき、慣れと怠慢の先に何があるのかが知りたくなった。絵で食べているわたしが、金にならない文章を書き続けること。たぶんそういうことだ。