断片日記

断片と告知

東京ベンチ

砂金一平さんとは佃島相生橋のたもとにある福祉施設で出会った。古本屋の友人たちが参加する、あいおい古本まつりの会場が、一平さんの働くその施設だったからだ。
リーゼントに細身のスーツを着て働く一平さんも、運河沿いに建つ見晴らしのいい建物も、福祉施設と聞き思い描くものとはかけ離れていた。一平さんはそこで、あいおい文庫という小さな図書室を作りながら、古本市をしたり、ライブをしたり、学生プロレスを呼んだり、施設で暮らす人たちに楽しんでもらえるだけではなく、街に住む人たちにも気軽に寄ってもらえる場所をつくろうと奮闘していた。
古本まつりで知り合ってから、横須賀に住む一平さんの電車の時間を気にしながら、夢と奮闘の話しを肴になんどか飲んだ。次は横須賀で飲もう、と約束したままのうちに、いつの間にか一平さんは江戸川区に越してきた。
お願いしたいことがあるんだけどと誘われ、古書往来座の瀬戸さんと向かった先は、小岩の立ち飲みだった。一平さんのお願いは、新しく立ち上げる施設のロゴを描くこと、古本を用意すること、だった。デイサービスと古本と珈琲、夜は酒と肴も楽しめる店、という一平さんの考え続けていた夢が、形になる日がきたのだ。
三人で飲みながら夢の場所の名前を考えた。デイサービスに通う人たちだけではなく、誰でも立ち寄れる、疲れたときにちょっと休める場所。ベンチってよくない?東京ってつく曲には名曲が多いよね、と、酔っ払いの頭をひねった末に、夢の場所は東京ベンチになった。
わたしはロゴを、古本は古書往来座の瀬戸さん、バリューブックスさん、荻原魚雷さんと一平さんが、珈琲はオリジナルの東京ベンチブレンドを用意したという。デイサービスはもちろん、珈琲だけ飲むことも、古本だけ買うこともできる。子どもから大人まで誰でも腰掛けられる場所、それが東京ベンチだ。
昼間のぽかっと空いた時間にぼんやり珈琲を飲んだり、一日の終わりにふらっと立ち寄れて、ビールの小瓶かワインのグラスを一杯、ちょっとした肴をつまみに、今日あった出来事や、日本シリーズの話、面白かった本や映画の話ができる場所。自分が年をとったときにそんな場所が近所にあったらいいなを、一平さんはつくるのだ。
出来たばかりの東京ベンチはまだ白い箱だ。少しずつソフトが増え、バージョンアップし、みんなの居心地のいい場所へと、ゆっくり近づいていければいいなと思う。

ケアブックカフェ『東京ベンチ
2014年7月1日、開店!
開店初日の営業時間は、9時から20時まで。
■住所:〒132-0011 東京都江戸川区瑞江2-22-5(都営新宿線瑞江駅」北口から徒歩4分)
■電話:03-6638-7256(7/1より開通)
■営業時間:9:00〜20:00(オープニングから一週間程度は18:00くらいまで)
■定休日:日曜日(ブックカフェのみ日曜日も営業する場合があります。ご来店の前にお電話ください)
東京ベンチの真面目な話。:http://tokyo-bench.hateblo.jp/entry/2014/06/23/004143