断片日記

断片と告知

コロナの春 6月19日から6月25日

6月19日金曜日

雨。ヨーグルト。「本日から県境をまたぐ移動、全国で規制解除」のニュース。金沢行くときいつも雨降ってるね、と出かけに母。朝7時半過ぎに家を出る。山手線は椅子がすべて埋まり立っている人もそこそこいる混み具合。上野駅もそこそこの往来があるが、新幹線の改札を抜けるとほぼ人がいない。改札内の、東京ばな奈、駅弁屋、ニューデイズはシャッターがおりたまま、4月8日から当面休みの貼り紙。地下のニューデイズはやっているが、店の手前に置かれたワゴンはひとつだけ、その半分くらいに東京土産の箱が申し訳程度に積まれている。こうなる前までは、店の前にワゴンが3つも4つも横に並び、限定駅弁や雷おこしなんかが山と積まれていた。ホームの駅弁屋もシャッターがおりたまま、新幹線のなかでも6月30日まで車内販売なしとアナウンスが流れる。車内も人はすかすか、ビジネス客らしき人たちが数人、カップルが一組だけいる。

金沢に着くと曇り。金沢駅の駅ビル・アントのなかの黒百合の前を通ると、のれんの下から1メートルくらいずつ離されたカウンターに向かう椅子の足が見える。客の姿はない。

歩いてKさんちへ。2月以来。Kさんに今日の宿を聞かれ、セントラルホテルですと言うと、そこらもさんが泊まったとこだよ、そこの前で西村賢太とつかみ合いになったんだもん、と。西村さんとの先約をすっぽかし、らもさんと飲みに行ったKさん、らもさんをホテルまで送ると教えていなかったのに西村さんがホテルの前で仁王立ち、胸ぐらつかまれた話はなんどか聞いていた。ここか。

Kさんちに荷物を置き、Kさんと金沢文圃閣経由で、室生犀星記念館まで歩く。せせらぎ通りの銭湯「松の湯」はシャッターがおりたまま、近づくと3月31日で閉店の貼り紙。女湯と男湯をわける壁のうえに巨大な赤い玉のオブジェがあり、湯船の奥の鉄製の段々から湯があふれるモダンな銭湯だった。犀星記念館で仕事の打ち合わせ。いまの展示は「旅する犀星 伊豆編」。畦地さんの文字の「じんなら魚」手ぬぐい、欲しい。台風で消滅したじんなら魚がいた小さな池の写真。

飲屋街と新天地をふらふらしていると雨が降りだす。武家屋敷の軒先でしばらく待つがやまず。軒先伝いに近くの中央通りまで走る。大きな通りなのにタクシー一台も通らず。かなりのどしゃ降り。先に帰っていたKさんに電話して車で迎えにきてもらう。長町の古書明治堂の軒先で待っていると、勝井さんの車がぎゃっと止まる。前にナンダロウさんにもここに迎えに来させられたことがある、なんでみんな明治堂の前なの、その時はまだ店はやってて、ここからもっと遠い古本屋にまで送らされたんだよ。Kさんちにおいていた荷物を取り、車でセントラルホテルの前まで送ってもらう。正面の本館は休業中、奥の東館のみの営業、そちらに泊まる。

雨やむ。ホテルから、ほとんど人のいない近江町市場を抜けて、片町のスクランブル交差点のローソン前まで。Kさん、Mさん、Sさんと4人でドイツビールの店ぴるぜんへ。時短営業中で夜9時まで。生ビールうまい。ジャーマンポテト、ほうれん草ベーコン、鴨、なんでもうまい。グラスの3分の2くらいが泡の現地ではデザートとして飲んでいるというビール。その後、バー一軒はしご。道の雪溶かしマシーン「ぴゅーぴゅーちゃん」の不評、町内会の付き合いの苦悩を聞く。3人とも外で飲むのは2月にわたしが来たときぶり、と。

ホテルに帰り二階の大浴場に行く。チェックインのとき、大浴場があるんですねー、と言うと、家族風呂くらいですよ、とはにかんでいたが、湯船の大きさ2畳くらい、カランふたつのみのそのまま家族風呂だった。が、ユニットバスに湯をためるより気分よく、ほかに客もおらず快適。廊下に貼られていたホテルの案内図を見ると、男風呂は女風呂の3倍くらいの大きさがある。テレビをつけたら「バックトゥーザフューチャー2」の最後らへんで、どしゃ降りの雨のなか、マイケル・J・フォックスがドクからの手紙を開いているところだった。

 

6月20日土曜日

晴れ。シャワーあびて、10時にチェックアウト。金沢駅のロッカーに余分な荷物を預け、歩きはじめる。一番小さいロッカー代400円。

近江町市場はそこそこの人出、鮮魚店なども開いているが、いつも行列ができていた回転寿しのもりもり寿司は休業のまま。そういえば行ったことがなかったと、金沢城へ。黒門から入りぐるっと回って大手門から出る。芝生が広い。大きな木戸にこれでもかと鉄の鋲が打ち込んである。写真を撮っているとカップルが、乳首ばっかりだねー、と言いながら通り過ぎる。

城から出て浅野川に向かって歩きながら、昼飯の場所をさがす。前に来たとき満席で入れなかった浅野川大橋そばの「タバコが吸える喫茶店 禁煙室」へ入る。客の姿はなく、カウンターへ通される。飯が食いたかったがまだ飲み物しかやっておらず、アイスオーレを頼む。カウンターには1人ずつ革製かなにかの赤いランチョンマットがきちっと敷かれ、その右上にカラフルなガラスの灰皿が一人ひとつずつ設置されている。誰もいないカウンターに、いくつものランチョンマットとカラフルな灰皿が並ぶ様が壮観だ。入り口の戸は開けっ放し、離れて座ってもらっているとのこと。

開けちゃだめなとこだけ事前に電話がかかってきて、うちみたいにどっちでもいい店はなんの連絡もなし。みんな前の日に新聞で知って、でも明日から休みますなんて、明日が集金の日だったし、常連さんにも一言も言えてないし。それで2日だけやって休んだんだけど、係りの人に一日でも開けてたらだめですって言われて、休めば20万もらえたんだけどね。常連の人たちが20人くらいいてね、その人たちに助けられているんだけど、話したら、行くよ、ってみんな来てくれて。先月はじめて家の家賃が払えなかったのよ。3月の末までは卒業旅行のこたちがたくさん来てくれて、来てくれなかったらなかったで大変だし、たくさん来てくれても怖いしね。バイトのこたちには子どももいるし、早めに帰ってもらったりして。このメニューの絵はね、そのバイトのこが描いてくれたの。美大受けたんだけど落ちちゃって。このタイル見て、トイレのタイルも見てみてね、外国から来た人にはわかるみたい。壁も戸棚もいまでは作れる人がいないみたいで、金沢の大学の先生が生徒たちを連れてわざわざ見に来るのよ。

店内にはわたしがアイスオーレを飲んでいるあいだ、常連だという男がひとり来て、カウンターの端に座ってテレビを見ていた。

浅野川沿いを、絵を描く橋の写真を撮りつつ、飯の場所を探して行ったり来たり。

さまよった末に小橋のそばの前から気になっていた釜飯屋へ入る。旅先だし思い切ってと、豚と自家製味噌の釜飯2600円を頼む。はじめに抹茶とお菓子がすっと出てき、そのあと大きな鉄鍋に味噌汁、つけもの、釜飯、デザートに梅酒のゼリーとミントの茶。値段の3倍くらいおいしい。

食べ終わってまた浅野川沿い、梅ノ橋より先の川沿いをはじめて歩く。川沿いの家は減り、緑が増えてくる。常盤橋を過ぎた辺りで右手の住宅街に入る。石鹸と化粧水を持ってくるのを忘れたので、スーパー「ニュー三久」へ、店内一周したが小さめの持ち歩き用のものはなく。鮮魚のコーナーを見ると、パックされた魚たちには、金沢港、地魚、などのシールが貼られ、寿司もうまそう。近くのドラッグストアでトラベルセットを買い、開店の2時に合わせて銭湯「兼六温泉」へ。住宅街一帯に薪を燃やす匂いと空には黒い煙がばんばん流れている。煙突は立派だが、建物はシンプルな白い箱のよう。正面に下足箱、左手に女湯の入り口。入ると右手に番台、460円払う。ロッカーもあるが床には脱衣籠も点々と。四角い脱衣所の正面に露天風呂の入り口とガラス窓、左手奥角に洗い場の入り口。洗い場は、手前の露天風呂の部分が三角形に切り取られたような、台形のような形。右手の露天に面した壁に変形の湯船がふたつ。ひとつが深め、ひとつが浅めで、どちらもとろんとした茶色い湯で満たされている。カランは残りの壁にぐるっと並ぶ。開店したばかりだが、次から次へと客が来て、カランは8割がた埋まっている。洗い場を1度出て、脱衣所を経由して露天に行く。立派な岩風呂、こちらも茶色い湯。奥の柵の向こうはすぐ男湯の露天のようで、男たちの話し声がよく聞こえる。晴れた空が気持ちがいい。入るときには出ていた煙が、出るときにはもう流れていなかった。

打ち合せまでまだ時間があるので、梅ノ橋よこの徳田秋聲記念館へ。受け付けで入館料300円払うと、手首で検温。1階は常設展、2階は企画展「岡栄一郎の陰影」。岡栄一郎は秋聲の遠縁で劇作家。2階には浅野川をのぞむようにベンチが置かれているが、3人掛けの真ん中の席に、大きくプリントされた徳田秋聲の顔が貼られている。売店で「黴」のクリアファイルが売られている。

浅野川に点々と釣り人の姿。土手から糸をたらすのではなく、みんな川に入って釣っている。土手に腰掛け釣っている人を見ている人に、すみません、あれはなにを釣っているんですか?とたずねる。鮎、鮎の友釣りや、とどこか関西風のことばの男。見てみ、あの一匹のしたにもう一匹ついとるから。おとりの鮎はたねやで養殖の鮎を買うんや、養殖で天然を釣る。わしが見ているあいだにもう3匹釣れたから、1日で30匹くらいちゃう?

常盤橋からまた住宅街に入り、打ち合せの場所へ。展示「昨日いらしってください。」古い民家をリノベーションした会場と、そこに住んでいた人の持ち物を使っての作品。姿見にかけてあった布に刺繍をしたもの、割った皿を裏表を逆にして漆で継いだもの。会場のテーブルを借りて仕事の打ち合わせ。

車で送ってもらい、神社を経由して浅野川大橋のあたりにおろしてもらう。また浅野川沿いを歩き、別院通りのYへ。いつも混んでいるがひとりだとカウンターに通してもらえる。スモークサーモンとアボカドのサラダ、パテ、ズワイガニのグラタン。なにをたべてもうまい。黒百合かここか、21時発の新幹線の時間までひとりで飲むのが最近の楽しみだ。目の前の厨房で働くマスターとスタッフたちの関係を見、おいしい、はらはらする、おいしい、はらはらする、を繰り返しながら飲む。

家に着くと入谷コピー文庫大滝秀治人間劇場シリーズ第8回『女と男』が届いていた。あいかわらずの塩山節。M家泊。

 

6月21日日曜日

早朝雨の音で目が覚めたが、2度寝し起きたら晴れ。納豆ご飯。往来座へ。店番はN。都知事選どーする?とNに聞かれ、宇都宮さん一択、と答える。Sの昼飯、ローソンで冷やしちくわ天かしわ天うどん、アイスコーヒーのメガサイズ。

台車を押すSと、近くのTの家へ。本の買取り。家に着いたところで、Sは近くの駐車場から車8号ちゃんをTの家の前に着ける。玄関に積まれていた本をオリコンに入れる、だいたい10箱。

車で往来座へ戻る。Sは本をおろし、わたしは大倉で買い物。ご近所のiさんがパクチーを買っている。夕方、小腹が減りmiがくれたラーメンを作って食べる。Sが味噌ラーメン、わたしが辛味噌ラーメン。

プレステ2で「かまいたちの夜2」やりはじめる。選択を間違うと、あっという間に暗くなりあっという間に死に、ゲームが終わる。

ズッキーニと赤ピーマンの豚バラ巻き、トマト、てきとーなパスタ。「かまいたちの夜2」続き。三浦哲郎『完本短編集モザイク』のなかの一篇「やどろく」をSが朗読。S家泊。

 

6月22日月曜日

雨。山芋納豆ご飯。ヒルナンデスは、三ヶ月ぶりにスタジオに黒沢さん復活。ここ最近、ナンちゃんと他2人がスタジオから、それ以外のメンバーは自宅や他の場所からのリモート中継。小峠はずっと日テレのロビーからの中継だったが、番組が終わるころスタジオに来て、明るいなぁ、とつぶやく。先週、横山くんも久しぶりにスタジオに来て、スタジオって明るい、と驚いていた。

データを送る絵のスキャンをし忘れ、雨のなか大きめの原画を持ってファミマまで。スキャンしS家に戻ってデータ送る。

やる気なく、一日敷きっぱなしの布団からテレビかユーチューブ見て過ごす。千鳥の相席食堂のかまいたちと中山きんにくんの反省会、霜降り明星オールナイトニッポン、宮迫のバイオハザード7の続き。夕方、小腹減りさっきファミマで買った冷凍のピザをトースターで焼いて食べる。

NHKファミリーヒストリー柳葉敏郎の回を見ながら、夕飯。つぶしたブロッコリーとベーコンのパスタ、オニオンスライス。ギバちゃんの早くに亡くなった父親と、前妻とのあいだの子どもの行方。

アマゾンプライムで映画「パラサイト」を観る。万引き家族を思い出す。

プレステ2で「かまいたちの夜2」の続き。もっと走ったり飛んだりしたい。やりたかったのはこういうゲームじゃないとわかる。

Sが「やどろく」朗読。途中でうとうとすると、ちゃんと聞いてる?こんな名文をもったいない、とSが怒ってやめる。S家泊。

 

6月23日火曜日

晴れ。山芋納豆ご飯。ヒルナンデスはチョコプラIKKOさんとあさこさんの料理。

Sは往来座へ。遅れてわたしも往来座へ、セブンイレブンで資料をプリントアウトし、戻る。

仕事の絵。

夜、また往来座へ。足りない画材を買いにSとパルコの世界堂へ。池袋駅に近づき人が増えてくると、人混みが怖い、とSがうるさい。こないださ、ニュースでアナウンサーが、今日から県を越えた移動が自由になりましたって、自由ってなんだよ自由って、強制されてたわけじゃないのにさ、とS。

西友で買い物。鶏肉のスープっぽいパスタが食べたい、とSが言うので、夕飯は鶏肉のスープっぽいクリームパスタ、オニオンスライス、トマト。ザクトクールが生産中止だって、とS。プレステ2で「かまいたちの夜2」の続き、わらべ唄篇が終わる。続きをする気にならずやめる。S家泊。

 

6月24日水曜日

曇り、晴れ。ズッキーニと赤ピーマンのジャワカレー。

仕事の絵。

ニュースで「東京都 55人感染確認 緊急事態宣言解除後、最多」。

夕方、車8号ちゃんで荻窪のHIちゃんちまで買取り。往来座の前に停めオリコンを積んでいると、新型コロナはただの風邪です、と言い放つ都知事選の候補者の車が目の前を走り去り、Sが、あははは、と声を出して笑う。

 ささま書店の前を通ると、シャッターはしまっていたが人の姿が。あ、野村さんだ、とSが車のなかから頭をさげる。

HIちゃんちの買い取り。小腹が空いて帰りの車中でもらったパン食べる。ドライトマトのパンうまい。

 雑司ヶ谷に戻り、Sは往来座オリコンをおろし、わたしは大倉で買い物。夕飯は、しそ入り豚つくね鍋、しめに玉子雑炊。テレビで広島巨人戦。無観客だが、誰かが打つと歓声の音声が流れる。広島はベンチでつけてるマスクも赤い。ベンチから選手たちのかけ声がよく聞こえる、いつもこんな風に声を出していたのか。

BEGINのユーチューブ見る。BEGINが作った楽器「一五一会」の解説。

家に帰ると母が、これ怖いから、と10万円入った封筒を差し出す。M家泊。

 

6月25日木曜日

雨、曇り。朝方、地震。納豆ご飯。10万円の封筒から2万円抜いて財布に入れる。12時半、往来座に行くとSはまだ来ておらず、鍵でなかに入る。1時近くにやっとS来る。Sの昼飯、三升屋でハンバーグ弁当、ローソンでアイスコーヒーのメガサイズ。

仕事の絵。

10万円入ったからと、miとuをラインで飲みに誘う。

夜、往来座へ。ギターを触っているとmiとuが来る。Sとmiとuとローソン100で買った缶ビールを飲みながら、ビックリガード横に建つ西武本社の広くなったデッキへ。uが、お腹空いちゃった、と言いながら出してきたキャベツ太郎一粒もらう。

4人で雲吉へ。最近、焼き鳥と焼きトンの違いがわかるようになった、とS。それぞれ好きな焼き鳥を頼んだが、大皿でどんと運ばれ、どれがどの部位か食べてもよくわからず。しめに蕎麦。ローソンでカフェラテ買い飲みながら帰る。M家泊。