断片日記

断片と告知

コロナの秋 10月18日から10月24日

10月18日金曜日

小雨。納豆ご飯。往来座にちらっと顔を出すと、疲れ切ったnと、昨晩ビリヤードに行き力が抜けてたのかいい球うてたんだ、と陽気なS。池袋から東上線で坂戸まで、越生線に乗り換えて終点越生まで、八高線に乗り換えて毛呂で降りる。車中、宇田さんの冊子『アーケードの本』を読みながら。乗るほど車窓に畑が増えていき、里芋、玉ねぎなどは遠目からもわかる。越生に着くころ、梅林、栗林、が見える。越生駅周辺は観光地らしく、なんとか寺、ここから何キロ、などの観光看板が駅のホームにもある。越生線八高線も単線で揺れる。毛呂駅のホームにあった便所でうがいすると、小学校の校庭の蛇口から出る赤錆の味がする。小さなかわいらしい駅舎、改札には駅員。切符を渡して出る。改札を出るとベンチに家庭用のでかい座布団が並ぶ待合室。駅舎の正面には埼玉医科大学病院が見え、途中に喫茶、定食屋パン屋割烹など飲食店がぱらぱら並んでいる。左手にはシャッターが降りたままの「驛前本屋」があり、看板は実篤文字で書かれている。病院前まで散策し、また駅まで引き返す。遅れてすみません、と言いながらsっちゅが到着。以前、驛前本屋に取材に来たことがあるそう。国道30号を歩く。ガードレールがあるようなないような、あっても草茫々で歩けるか歩けないか微妙な道を南下していく。トラックや車が横をすり抜けていくのが怖い。霧がかかる山、畑、びっしりなる柿の木、など目にするたび、すげー、すごくないっすか、とsっちゅ。畑と民家だけの道に、突然スイートポテトの店、毛呂出身だという俳人の碑。参政党の女性のイラストが使われたポスターを見、これぜんぶAIで描いてるんですって、とsっちゅ。sっちゅがスマホで道を確認しつつ、どーんとでかい「新しき村」の看板の先を左手に折れる。看板を見、うぉー、ずっと来たかったんですよ、とsっちゅ。八高線の線路を渡り、森を抜けると実篤の碑が建つ「新しき村」の入口がある。道の脇には手入れされた生け垣、民家、集会場などぽつぽつと見えるがひとっこ一人いない。道には落ち葉さえもない。これホラー映画だったら、と言い合いながら村のなかに入っていく。しばらく行くと右手に、アトリエ、都電、の看板が見える。外に彫刻が置かれたアトリエ、その先の林のなかに白く塗られた古い都電が見え、その先に田んぼが見える。都電は村の幼稚園として使っていたそう。田んぼの前には小さな畑、その横にベンチ。さっきの道に戻りしばらく行くと、左手に井戸、右手に公会堂。入口のガラス扉から公会堂のなかをのぞくと、窓から入る光のなかに古いテーブル椅子が並んでいるが、ほこりひとつ見えない。それなのにやっぱりひとがいない。向かいの実篤美術館へ。入口に、開館中、と出ているが電気が消えている。引き戸を開け、こんにちはー、と大きな声で呼びかけると、なかから、はーい、と男性の声。すばらくすると、パジャマにガウンを羽織った方が出てきて電気をつけてくれる。入館料200円を払い、来館者名簿に名前を書く。日付を見ると、ほぼ毎日数人の来館者がある。ロビーにかけられた劉生の絵を観ていると、着ていた上着をほめられる。スリッパに履き替え、右手の展示室へ。実篤の絵、実篤の思い出の品、実篤の本、新しき村の雑誌、劉生がが装丁した本、などが二部屋に並んでいて見応えがある。かぼちゃやナスの絵の仲良きことは、のイメージしかなかったが、油絵もあり、90歳を過ぎても画風が変わらなかったりと、いろんな実篤を観られて楽しい。図書館のようなスペースで村民だった渡辺貫二さんの『無車詩集』と、入口で売っていた新しい村で作られた米を買う。『無車詩集』は、「武者小路先生の二千数百の詩の中から新しき村に係り深い詩を選んで本集を成す」と巻末に書かれている。折り手本に、すべて手書きで、間違ったところは紙が貼られて訂正されており、迫力がある。米はミルキークイーンの新米だそう。便所がすごいきれいでした、とsっちゅが言うので、公会堂横の便所に入る。外から見ると木造の古いキャンプ場にありそうな怖い便所に見えるのに、なかに入るとゴミ、虫ひとつ落ちていない真っ白な洋式の便所で驚く。ほんとに便所きれいだった、と報告する。さっきのひと27歳で村に入って49年ですって、いま住んでるひとは3人ですって、とsっちゅ。道を戻り、生活館へ。井戸の向かいのベンチでおしゃべりする女性3人を見かける。生活館も電気がついておらず。なかに入ってまず電気のスイッチを探してつける。こちらは村民たちの作品が並ぶ。油絵、書、陶芸、村の写真など。実篤美術館と違い、絵には蜘蛛の巣がかかり、ホコリがつもっている。写真には大人子どもがたくさん写っているが、最盛期でも村人は60人ほどらしい。村外の会員たちの手で維持されているそう。実篤夫妻の骨が入る納骨堂、大愛堂を見、田んぼ沿いを戻ってさっきのアトリエまで。ここも引き戸を開け、スイッチを探し、電気をつけて入る。ここにも油絵など壁にかかり、テーブルにはお茶セット、新しいお菓子が置かれている。ご自由に飲んでいいらしい。村にも建物にも入るのに若干勇気がいるが、入るとどこも温かいひとの気配がし、排他的な空気はまったくない。田んぼ沿いに出、公会堂にかかっていた手描きの村内地図と、美術館でもらった手描きの地図のコピーをもとに歩いていくが、村の外の道に出られず。雨で濡れた草のなかをサンダルをずぶずぶに濡らしながら道なき道を行くが公道に出られず。近くまで行けても深い溝でその先に行けず。だいぶ手前まで戻り、きっとここです、あそこに坂が見える、というsっちゅのことばを信じて進み、やっと公道に出られる。このまま村から出られないかと思った、と言い合う。村から武州長瀬駅まで20分くらいと教えてもらっていたが、すでに20分以上経っている。公道に出、団地といいながら戸建ての家が並ぶ住宅地を抜けて武州長瀬駅へ。途中、道沿いに埼玉ではよく見るという弁当屋の日本亭。海苔弁が安くてうまい、とsっちゅ。買って帰ると家族がよろこぶそう。武州長瀬駅で切符を買っていると、sっちゅが駅舎の窓から駅の反対側を見ている。反対側も必ず見るようにしているんです、とsっちゅ。小腹が空いたので買ってきてもいいですか、と言うので駅の反対側に見えたドラッグストアに行く。ドラッグストアセキ、も埼玉でよく見るそう。甘いお菓子と甘いジュースを買っている。柿の種チョコくれる。ちょうどホームにいた越生線に飛び乗る。車内で柿の種チョコを食べつつ、新しき村でもらった冊子を見る。坂戸で乗り換え、東上線で池袋まで。どうしたらいいのか、と世の中や老後のわからないことをぶつぶつ言いながら帰る。池袋でsっちゅと別れ、M家に帰り、泥と草まみれの足を洗う。泥が足の爪まで入り込んでいてなかなか落ちず。往来座へ。『名画座手帳』の発売日。『名画座手帳』の発送の手伝い。冊数、送り先を確認し、テープで封をしていく。もらった缶ビール飲む。KAさん、KIさん、BIさん、ru先輩。BIさん、ru先輩にもらった太鼓渡す。uちゃんが松茸おにぎりくれる。握りたてでうまい。お会式を見に行くuちゃんと一緒に参道まで。鬼子母神周辺までくれば賑やかだが、例年より太鼓も講も少なく、やっぱり町が静かだと思う。参道の屋台でKさんおすすめのシャーピンを買い往来座に戻る。シャーピンをnと半分こずつ食べ、もらった缶ビール飲み続ける。ru先輩はバスで早稲田松竹まで手帳の納品へ。閉店後、nとru先輩は文芸坐へ手帳の納品へ。saさん。画像をpdfにまとめることをすすめられる。編集者に提案しやすいそう。uちゃん戻り、ファミマまで一緒に帰る。例年なら最終日は12時近くまで太鼓の音が聞こえていたが、それもない。夕飯は、そぼろ肉豆腐、ごぼう汁。Sのごぼう汁には卵をおとす。『アーケードの本」最後まで読む。宇田さんの一喜一憂。読んだあとはアーケード協議会の手を広げているイラストさえ違って見える。疲れと飲み過ぎで早々に寝る。S家泊。

 

10月19日土曜日

晴れ。暑い。玉ねぎじゃが芋コーンひき肉のカレー。米は昨日、あたらしき村で買ったミルキークィーンの新米。新米なのを忘れて水をいつものように入れたら少し柔らかく炊ける。米、うまい。水曜日のダウンタウン、見る。Sは往来座へ。今日のSは車で本局へ行き手帳を発送し、店に戻ってBスポの準備。明後日はまた買い取りと、忙しさが途切れず。洗濯。数日来ないだけで部屋が荒れているので掃除をしなければと思うものの、疲れて出来ず。『アーケードの本』と一緒に送られてきたはっちのフリペ「わたしの街」を読む。こちらもおもしろい。ふたりとも決意表明で終わっている。たまったブログ書き。疲れて転がる。夜、往来座へ。9時から不忍ブックストリームの配信開始。ゲストは文学通信の松尾さん。Bスポは文庫の番号を当てる、背番号でGO!。終えて、S、nとタカセ横の日高屋へ。生ビール、餃子、野菜炒め、明太ポテサラ、汁なし麺。nは味噌ラーメンを食べながら、この平たい麺久しぶり、とうれしそう。nと別れ、Sと雑司ヶ谷に帰る。雑司ヶ谷霊園のなかを抜けると、おれここでいい、と真ん中に造っている共同墓地をSが指す。おいらはどこでもいい、その辺に捨てといていい、と返すと、モズと一緒のとこは、とSが言うので、モズと一緒がいい、じゃぁおれもそこがいい、と埋まる場所が決まる。モズをぎゅっとするんだーと話していると、ぴゅっと涙が出てくる。S家に帰り、早々に寝る。S家泊。

 

10月20日日曜日

晴れ。冬の気配。玉ねぎピーマンベーコンのトマトソースパスタ。お笑い向上委員会、ゴットタン、見る。TVerの広告に自民党が出る。Xにも自民党の広告。うんざりする。葉山修平『小説室生犀星』読みはじめる。来年のカレンダーは切り絵はどうかと試しに作りはじめる。ほぐしの達人に予約の電話。夕方、ほぐしの達人へ。近くの中池袋公園ではなにかのイベントをやっており、屋台が並び、舞台のほうからときどき野太い声援が聞こえる。いつもは60分だが今日ははじめて90分。わたしの硬い肉を押すたび施術者の指がぽきぽきなる。終えて、往来座へ。寒いので焼酎お湯割り。閉店後の店内でS、nが手帳発送などの作業をしている。自民党に火炎瓶を投げたひと。遅くなりそうなので大倉で買い物して先に帰る。夕飯は、トマト、白菜水餃子汁。汁にはごぼうと大根も入れる。9時半過ぎ、S帰る。Sの夕飯は、トマト、薬味をたくさんのせたかつおのたたき、水餃子汁。『小説室生犀星』読んで早々に寝る。S家泊。

 

10月21日月曜日

晴れ。玉ねぎピーマンひき肉のカレー。ルーはジャワカレー中辛のカロリーハーフ。米粒写経の古書探訪はらせん堂さんの後半。青森に行きたくなる。Sは往来座へ。昼過ぎ、わたしも往来座へ。S、nと近所へ買い取りへ。わたしが小さいころテーラーだった家。ショーウィンドーに背広が飾ってあったのを覚えている。35年前までお住まいだったそうで、それからずっと空き家だったため、昭和がぎゅっと残っている。思っていたより本が多く、夜までかかる。S、nと缶ビール飲みながら、東池袋の何駄感駄へ。生ビール、白ワイングラス、ルッコラのサラダ、ピクルス、生ハム盛り合わせ、肉盛り合わせ、マルゲリータピザ、ブルーチーズのパスタ。Sが主語を抜いて話してくる問題。M家泊。

 

10月22日火曜日

晴れ。納豆ご飯。食堂アルバイトへ。今日から新しいひとが入る。有名な漫画家と同じ名字なので、もしかして、とたずねると、親戚でもなんでもありません、とのこと。終えて、S家へ。Sは久しぶりのなにもない休日、布団に転がり動画を見るかブログを書くかしている。文字。夜、Sと缶ビール飲みつつ護国寺マルエツへ。買い物。本搾り飲みつつ帰る。夕飯は、納豆みょうがオクラ、ごぼう汁。Sはマルエツで買ったイワシの南蛮漬けを、わたしは小籠包を食べる。麦チョコを少し。田坂具隆監督の映画「女中ッ子」観る。女中役の左幸子がまぶしい。女中の実家は角館の奥地でこけしを作っており、こけしの顔に紅をさすシーンがある。こないだ観た「暢気眼鏡」でかわいらしかった轟夕起子が嫌な母親役で悲しい。家の主人が時計屋に務めており、応接間らしきところに何十台も時計が置かれ、1時間ごとに、ぐわんぐわんしゃんしゃんちんちんと鳴り出しノイローゼになりそう。音楽は、伊福部昭。子どもたちの運動会のシーンで、ゴジラのテーマ曲が一瞬流れる。息子が唯一心を開いた女中を家から追い出し、息子の非行が悪化する未来しか見えないところで終わる。それなのに読後感は、不思議とからっとしている。M家泊。

 

10月23日水曜日

曇り。納豆ご飯。食堂アルバイトへ。忙しい。終えて、外に出ると雨は降っていないが地面が濡れている。往来座へ。店員tがぎっくり腰のため、かわりにSが出勤している。ブツの商品化。5時に閉店し、Sと丸ノ内線本郷三丁目まで。大通りに出たところで樋口一葉散歩をしていたn、ru先輩に会う。待ち合わせの時間には早いので、近くの本郷薬師、十一面観音像、櫻木神社を見る。本郷薬師には「医王山」の額がかけられている。東大は元前田藩の土地だからなんかあるのかもね、とru先輩。ru先輩が予約していた焼肉屋房家へ。しばらくして仕事帰りのKOくんも来る。KOくんの就職祝い飲み会。生ビール、ナムル盛り合わせ、白菜キムチ、焼き肉いろいろ、しめに冷麺とガーリックチャーハン。どれもうまい。生わさびにまみれた肉とサラダのようなキムチがとくにうまい。明日のドラフト会議、幼馴染で結婚した両親、舎人公園本郷三丁目駅でKOくんと別れ、S、n、ru先輩と丸ノ内線で池袋まで。nと別れ雑司ヶ谷に帰る。M家泊。

 

10月24日木曜日

曇り。暑い。納豆ご飯。今日、お父さんの命日だけど、と母。食堂アルバイトへ。終えて、S家へ。文字。夜、セブンイレブンへ。描いた文字をスキャンしようと思うも、usbを入れたカード入れごと見つからず。どこかにぽんと置いた場所が思い出せず。M家で母が作ったササミの味噌漬けもらう。往来座へ。ru先輩。お茶割り。ru先輩が昨日買った石井いり豆店の豆菓子食べる。わさび味とカレー味、うまい。外が生暖かく、Tシャツで帰る。夕飯は、母が作ったササミの味噌漬けとピーマンじゃがいも炒め、ごぼう汁。楽しい映画が観たい、あんまり考えなくていいやつ、とru先輩に相談し、すすめてくれた映画「ジュラシック・パーク」観るも途中で寝落ち。Sは最後まで観る。S家泊。