断片日記

断片と告知

独りはねつき

描いている途中になくなっては嫌だなと思う画材を買い込み、かえる食堂で英気を養ってから、アトリエに行く。黒いオイルパステルを握り締め、絵を描いていく。指先が、手のひらが、手の甲が、黒いパステルで染まっていく。そんな手をしていることも忘れて、時々ポリポリと顔を掻いたりする。廊下の端にあるトイレにいって、さて手を洗おうと鏡を見ると、羽根突きで負けた人のように、黒い線が顔のあちこちを走っている。お正月でもあるまいに、1人でこんな顔をして、人のいる廊下を歩いてきたのかと思うと、恥ずかしいやら情けないやら。ため息をつきながら、絵描きなんてこんなもんだ、と鏡に向かって独りつぶやく。