断片日記

断片と告知

夜の顔

町には、昼の顔と夜の顔があって、同じ町、同じ道を、同じように歩いても、時間によって違う顔を見せてくる。昼間、ただの住宅街だと思って歩いた場所が、暗くなってからの帰り道、赤ちょうちんが灯り、ネオンが点滅し、この町はこんなに派手な顔をしていたのかと、驚くことがある。どの駅からも遠い、大きな通りから1本も2本も中に入った細い道の、なぜこんなところに小さな飲み屋が密集しているのかと、不思議な気持ちで眺めながら、夜道を歩く。もう一杯と、中に入ってみたい気もするけれど、こうゆうところの店は、外から中が見えず、どの扉も重そうに閉じている。帰り道を急ぐ余所者に、その扉を開けて入る勇気はない。