断片日記

断片と告知

やるじゃないの庶民も

青山のHBギャラリーで久村香織さんの個展「夏の味」を見る。近くのオーパギャラリーで5人展「アニマルジャンボリー」を見る。
HBギャラリーに行って思い出したことを1つ。グループ展をしたときに、鎌倉の名物だという押し寿司を差し入れでいただいた。押し寿司の包み紙には西岸良平の『鎌倉ものがたり』の絵が使われている。その絵を見たAさんが「あ、つげ義春だ。」と。いや、違うよ、西岸良平だよ、ほら『三丁目の夕日』の、とあわあわと説明すると、「えーじゃぁ、つげ義春ってどんな絵だっけ」とまたAさん。ほら、もっと暗くて、絶対に弁当のパッケージとかにはならない絵、とその時はそれで笑い話で終わったのだけれど、いま思うと、これは間違っていた。
つげ義春の絵の押し寿司や、弁当があってもいいじゃないか。特に駅弁なんかは、ぴったりではないのか。
つげさんの絵ならば、なるべく質素な弁当がいい。塩だけのおむすびが2つか3つ。おかずはきんぴらと卵焼きくらい。味もあまり美味しくては困る。美味しくないなぁ、と思いつつも全部食べれてしまう感じがいい。料理の下手な母親が作った運動会の弁当のようなイメージが似合う。その冷めておむすびの周りがちょっとかぴかぴしたようなのを、千葉の房総とかの寂れた海岸でもそもそと食べる。食べている途中で悲しくなってきて、俺ってなにやってんだよ、と涙がポロリと出てしまう感じが望ましい。包み紙の絵はどうしようか。『ねじ式』とかではさらに食欲が落ちそうだし『ゲンセンカン主人』とか『オンドル小屋』とかもちょっとだし。そんなわけでここは1つ『海辺の叙景』ではどうだろう。いや房総だし、ここはやはり『庶民御宿』か。