いつも行くラーメン屋。ママさんが、昨日あのコたち来てたわよ、と言うあのコたちとはTくんとOさんのことで、この2人組みとは去年から何度かこの店で遭遇している。そんな話を聞いた後、カウンターの下の棚に手を伸ばすと、雑誌やコミックが並ぶそこに、1冊だけ場違いな新書があった。わめぞの「みちくさ市」のチラシが書皮に使われているその本は「芥川賞を取らなかった名作たち」で、ここにこんなものを忘れていくのはTに違いない、今度会ったときに、忘れものだよ、と手渡そうとかばんに入れて持ち帰った。数日して、しばらく会う機会がないことに気づき、他の用事と一緒にメールを送った。返ってきた返事には、それOさんのなんです、と。しかも、次の日に探しにいったときにはすでになく、もう1冊買ってしまいました、と。Oさん、犯人は私です。なんなりと罰を。