断片日記

断片と告知

黒豚

東久留米駅から少し歩くと川にぶつかる。住宅地の中を走る小さな川だが、コンクリートで固めていない、緑が茫々と繁る川岸が気に入って、よく川沿いの遊歩道を散歩している。この遊歩道で、たまに黒豚に会う。豚をペットとして飼うというのは聞いたことがあるし、雑誌やテレビでも見たこともあるが、そこで紹介される豚はどれも小型の豚で大きさも犬と変わらず、ペットとして連れていても違和感がなかった。ところが、この川で会う黒豚は、養豚場にいるような巨大な豚なのだ。黒い毛で覆われた体もでかいが、それ以上に太っていて、短い四足で立つと、そこだけ毛の無いピンクのお腹とプチプチと飛び出ている乳首がほとんど地面を擦っている。見るたびに、お腹や乳首から血が出ないかと心配になる。おじさんとお兄さんの中間ぐらいの男性が2人、この黒豚を散歩させている。散歩といっても豚はその体型のせいか歩くのがしんどそうで、ほとんど動かない。ゴロンと倒れるように横になっているか、ふと立ち止まって黄色いおしっこをじゃぁじゃぁと後ろに飛ばしている。ほとんど進まない散歩をするのは大変だろう。それでも男性2人は文句も言わず、この豚の好きにさせて、自分たちはじっとそばに立っている。1度この豚に触ったことがある。顔のそばは嫌がるからとおじさんに言われ、黒い毛の生えた背中を撫でた。黒い毛は固く、体はほんわりと暖かかった。気になるのはこの黒豚を最近見ないということ。もしかして食べられてしまったのか、それとも寒くて散歩を嫌がっているのか。考えられる理由の1つに、食べられてしまったかも、が入るのが豚の悲しいところだ。