断片日記

断片と告知

雑木林

東京の少し郊外。雑木林を削って新しい道が作られている。途中まで舗装されたその道を歩いていると、横の林の中から1匹の獣が目の前に現れる。人がいるのを見て慌ててまた林の中に戻ろうとする。逃げ出さないようにゆっくりと近づき間近でそれをじっと見る。小さなタヌキだった。皮膚病なのか、体には1本の毛も生えておらず、荒れたピンクの肌が痛々しい。顔だけに残された毛の模様と形から、やっとタヌキと解る。目が合う。目やにだらけの顔をしている。林の中からガサガサと草を踏む音がする。親なのか兄弟なのか、この小さなタヌキには仲間がいて、戻ってこいと合図を送っている。林の中に消えていく小さな病気のタヌキを見送る。この道路を作ったのは私じゃない。林を削ったのも私じゃない。皮膚病になったのも私のせいじゃない。それなのに、全部私が悪いような気がして悲しくなる。