断片日記

断片と告知

ロフトA

ナンダロウさんに誘われて、阿佐ヶ谷ロフトAでのトークイベント「『マンガ論争勃発2』発売記念!! 昼間たかし東大入学お祝いイベント 永山薫vs昼間たかし これが現実だ!と、言われても・・・」を聞きに行く。どこへでも1人で行く男が、なぜかこのイベントに限り、入場料も出すからとまで言い同行をつのるのか。塩山さんがゲストで出るというトークイベントそのものよりも、ナンダロウさんのその意味不明さが気になり、一緒に行くことにする。同行はもう1人、漫画関係のトークだからと、漫画評論も書くU−SEN君を誘う。そして、ナンダロウ、ムトー、U-SEN、というまことに奇妙な3人で、ロフトAに乗り込むことになる。
阿佐ヶ谷駅南口のパールセンター街に入って数分、雑居ビルの地下にロフトAはある。階段を降り、バーカウンターのような受付で入場料を払い、左手奥の扉へと進む。扉の向こうは、ライブハウスのような作りになっていて、マイクの並ぶ小さな舞台があり、その前にはテーブルと椅子が適当に散らばり、思った以上に客席は埋まっている。50人以上はいるお客を見て、男ばかりだな、とナンダロウさんがぼそりとつぶやく。後ろの方に空いていた席に座り、生ビールを飲みながら、今日のトークのお題にもなっている『マンガ論争勃発2』をナンダロウさんから借り、パラパラとめくる。漫画表現の論争といっても、どれに焦点を絞るかで全く内容がことなるわけで、寄稿する人によってまちまちな論争がまちまちに並べられているこの本は、全体像がぼやけている。エロならエロ、著作権なら著作権で、どれかに絞ったほうがそれぞれの意見の面白さが引き立つような気もするが、どうなのだろう。
7時を過ぎ、塩山さんの新刊を出した版元・アストラのOさんの弔辞風挨拶で、トークショーがはじまる。司会の昼間たかしさんと永山薫さんに挟まれて、その真ん中に、縞々のぴたりとしたTシャツを着た塩山さんが座る。いつもよりお洒落に見えるのは遠目のせいかどうなのか。トークの内容は、塩山さんの新刊の内容、それに先日のワメトークの内容を混ぜて薄めた感じで、はじめて聞く人にはいいかもしれないが、塩山さんを知る人にとっては新鮮みがない。田母神航空幕僚長の娘の話ははじめて聞いたが、それもどうと言うこともない。途中、会場にナンダロウアヤシゲさんが来られているようです、と壇上から呼び出しを受けるが、横に座るナンダロウさんは頑なに顔を下に向け返事もしない。前に座るU-SEN君が振り返り、微妙な顔でそれを見つめる。塩山さんのトークはどれぐらいの時間だったのか、薄いままなんとなく終わる。何の「漫画論争」も勃発していなければ、「これが現実だ!と、言われても・・・」な話も特になかった。
塩山さんが引っ込んだ後は、女性2人が壇上に上がる。1人は漫画家、1人は社会学者らしく、BL本と司馬遼太郎とオナニーについて熱く語っているが、それも「漫画論争」と言えるのかどうか。その辺りから嫌気が差しはじめ、その気配を察したナンダロウさんに、もう飽きた?、と聞かれる。次の人が面白くなかったら出る、と意見がまとまとまり、壇上に意識を戻すと、いきなりよくわからない映画の宣伝がはじまったのにうんざりし、U-SEN君だけ残して外に出る。路地奥の焼き鳥屋でナンダロウさんと飲み直し。しばらく2人で飲んでいるところに、途中退場してきたU-SEN君も合流する。漫画評論を志す人間が途中で出てくるとは思わなかった最後まで聞けよ、と野次を飛ばしていると、背もたれのない椅子に2時間以上は無理です、と背もたれのない焼き鳥屋の椅子に喜んで座りながらヘタレなことを言い出す。それにしても、ナンダロウさんが今日のイベントに1人で行きたくなかったという気持ちが、なんとなくわかる。あの内輪な感じは、そうでない人間には息苦しくて仕方がない。
作りかけの「わめぞのフリーペーパー」をナンダロウさんに見せ、ダメだしをくらう。阿佐ヶ谷に来る前に早稲田にも寄り、古書現世のパロパロ向井にも同じようなダメだしをくらったばかりだったので、しばし落ち込む。
仕事帰りのピッポさんが遅れて合流する。美人が来ると場と心が和む。飲んでいるうちにまた楽しくなってくるが、気の重さは残ったまま。終電ギリギリまで飲み、新宿でナンダロウさん、ピッポさんと別れる。雑司ヶ谷住民のU-SEN君と歩いて帰る。U-SEN君の狂気が入り混じったバカさ加減は、何かに使えそうな気がするが、それがなんなのかがまだよくわからない。