断片日記

断片と告知

前野さんと佐藤さん(酔っ払い)

和光大学東上線の和光駅にあるのではなく、小田急線の鶴川駅にある。なんでだ、といつも思う。山手線で新宿に出て、小田急線で鶴川に向かう。新宿駅で停車している小田急ロマンスカーを見る。普段の電車とは違う、ロマンスカーとか新幹線とか北斗星とか、そういう電車を見ると心が騒ぐ。どこかに行きたい、とこないだ仙台から戻ってきたばかりなのにそう思う。鶴川駅南口改札を出て和光大学まで歩く。多摩丘陵とよばれるこの辺り、小さな丘がぼこぼこと続く。途中、柿畑を何度か見る。そう言えば、鶴川駅の隣りは柿生という名の駅で、この辺りの名産は柿なのだろうか。
小さな丘の上に和光大学はある。「雑誌研究」のゲストで、仙台・火星の庭の前野さん、ジュンク堂仙台ロフト店の佐藤さんに来てもらので、ついでに仙台特集の「わめふり」も配れば、とナンダロウさんに誘われたのだ。16時過ぎ、和光大学に着く。ナンダロウさん、前野さん、佐藤さんの3人は教員室でお茶を飲んで寛いでいる。大学に来る前に寄ってきたという白州次郎と正子の家「武相荘」の商魂のたくましさについて、ナンダロウさんがぶつぶつと文句を言っている。
16時20分、教室に向かう。一番後ろの席にもぐりの聴講生としてモンガ堂さんがいらしたので、挨拶をしてその横に座る。階段状の木の机と椅子の教室よさようなら。今はどこでもこうなのか、つるんとした校舎に、つるんとした教室、1人に1台のパソコン完備、モニターの影に隠れて内職し放題ではないか。先生でも生徒でもなく、部外者として教室を見回してみると、熱心な生徒、そうでもない生徒、漫画を読んでいる生徒、と丸見えで面白い。
先週の授業でナンダロウさんが出した課題は「自分のつくる雑誌に入れる記事のタイトルを10本以上考える」こと。何人かの生徒たちを立たせ、タイトルを言わせ、それについての意見と感想をのべていく。U-SEN君をもっと怖く暗くしたような生徒が作ろうとしている雑誌が一番面白そうだったが、この子は将来どうなるのだろうと心配になる。地域雑誌の説明があった後、前野さんと佐藤さんの出番となる。仙台について、古本屋について、新刊本屋について、ミニコミ誌について、それ以外の仙台の文化と町について、短い時間の中で濃く語っていく。最後に「わめふり」を配らせてもらい、今日の授業はオシマイとなる。バスで鶴川駅まで戻る。渋滞で歩くよりも遅いバスに揺られながら、バスに乗るのは何年ぶりかしら、もしかして10年以上ぶりかしら、と考えている。
取材で新宿駅の地下道を歩きたいというナンダロウさんに従い、西口の地下から東口の地下街サブナードまで歩く。途中途中で、写真を撮り、この店っていつぐらいからあったっけ、とか、昔ここに王様のアイデアがあったよなそこの前まで連れて行け、とか、武藤だけならともかく、仙台から来たゲストを引き連れているのに新宿地下の階段をのぼったりさがったり、これでいいのだろうか。取材はサブナードで終わりにしてもらい、新宿アルタ裏の沖縄料理屋へと行く。席についたとほぼ同時にオリオンビールの生を飲む。ふー、うまい。仕事帰りの立石書店ブルゴーニュ岡島と古書現世・パロパロ向井も加わり、ひたすら飲んで話して食う。途中、佐藤さんが飲みすぎて壊れる。席を立ちくねくねとタコ踊りをしながら何かを訴えている、がよくわからない。ここまで壊れている人を見てしまうと、いくら酔っても頭はどこか覚めていく。先に酔っ払ったもん勝ちだとシミジミ思う。佐藤さんは東京滞在中、ナンダロウさんの仕事部屋に居候しているのだが、この酔っ払いと千駄木まで帰るナンダロウさんに少し同情する。
ナンダロウさん、前野さん、佐藤さんはJRで、わめぞ3人組は副都心線で帰る。覚めた頭でパロパロ向井をよく見ると、少し痩せた気がする。最近ズボンが緩いんだよ。こいつの口からこんな言葉が出る日がこようとは。