断片日記

断片と告知

町と古本と銭湯と酒

昨夜からの雨、今朝には上がる。今日は一箱古本市、そして「おとえ」の日。10時少し過ぎに谷中の往来堂書店に到着。本を並べ、朝礼をして、11時の開店を待つ。開店直後の混乱もさほどなく、ゆっくりと一箱古本市の1日がはじまる。
レジ当番の時間は13時半からなので、それまでぶらぶらと谷根千を歩く。まずレプロットで開催している「おとえ」の調子はどうかと見てみると、すでに3人もお客さんが来てくれたそうで、音の台所さんの顔がホクホクしている。誰も来てくれなかったら、とずっと心配していたので、まずは良かった。レプロットの前で音の台所さんと話していると「もしかしたら大酒飲みの武藤さんですか?」と知らないお兄さんに声をかけられる。こうゆう時、どう答えていいものか、しばし悩む。
そのまま裏道を歩くと、道の途中を通行止めにして町内会のバザーをしている。覗いてみると古本も出ている。ざっと見る。なかなかおもしろい本が、と5冊選ぶ。5冊で200円。やはり覗きに来ていた一箱店主の方と「もしかしたら今日の中でここが1番いいかも。」とニヤリと笑い合う。
根津神社つつじ祭りのため、町中が人で溢れている。大通りも、路地の奥も人だらけ。みんな楽しそうに町を歩いている。その人たちに答えるように、町の人たちもバザーをやったり、セールをやったり、かっぽれを踊ったり、鼓笛隊が道路で演奏したり。町中みんなが楽しんでいて、とてもいい。
お昼に中華料理屋さんで瓶ビールとラーメン。「おとえ」を覗きつつ、往来堂書店に戻る。レジ当番をしていると、どの箱の本がよく売れているか、みんながどの本をよく手に取るのかがわかっておもしろい。手にとるけど必ず箱に戻される本は、ちょっと値段が高いのかな、とか。往来堂前は大きな通りに面しているので、ひっきりなしにお客さんが来て箱を見ていく。その前の通りを鼓笛隊が通り、かっぽれが通り。1日、飽きる暇がなく楽しめた。
16時に一箱古本市は終了し、18時からの打ち上げ会にはまだ間があるので、銭湯「初音湯」に行く。久しぶりの東京の銭湯。脱衣所の格天井、浴室の高い吹き抜けの天井と明り取りの窓、富士山のペンキ絵、これらは関西の銭湯ではお目にかかれなかったもの。関西の銭湯は奥に深く、東京の銭湯は上に高い、という印象。まだ明るいうちに、高い天井の大きな窓から入る日の光を浴びながらの入浴は、本当に気持ちがよく、この点では東京の銭湯のほうがいいな、と感じる。湯船は洗い場の真中に鎮座し、透明なお湯が2つ、硫黄の乳白色に濁ったお湯が2つ。硫黄のお湯の方が温度が高く、温度計を見ると46度になっている。関西のお湯はどこもぬるめだったので、久しぶりの江戸っ子のお湯に身が引き締まる。乳白色で「初音湯」という文字入りの桶も珍しかった。
夕暮れの谷中銀座を覗く。生ビールを買って、酒屋さんの前に出ていた椅子で飲む。銭湯のあとのビールは、本当にうまい。せっかくなので、コロッケも買い、焼き鳥も買い、さっき買ったベーグルも出し、ビールのつまみにする。体は銭湯でほかほか、それを心地よく冷やす生ビール、そしてお腹を満たすおかずたち。このままここで飲んだくれていたい。
谷中銀座でくつろぎ過ぎて、打ち上げ会場に着いたときにはすでに会ははじまっていた。でも一箱古本市の打ち上げはいつも長くかかるからと油断していたら、さくさくと進行が進み、入賞者の発表もあっという間、40分くらいで打ち上げ会は終わってしまった。2時間は覚悟していたのに。いつも西荻窪の昼本市で隣になる「あり小屋」さんがオヨヨ賞をもらっていたのが、うれしかった。
近くのラーメン屋で、ちょっと一杯やって帰る。ラーメン屋のカウンターで、ビールを飲みながら、その日売れたスリップを見るのが、1日の終わりの至福の時間。売上スリップは、最高のつまみ。かもしれない。
一箱古本市にご来場の皆様、「おとえ」にご参加の皆様、どうもありがとうございました。そして「おとえ」に店先を貸してくださったレプロットさん、ありがとうございました。皆々様、楽しい1日を、どうもありがとう。