断片日記

断片と告知

赤い電車

山手線に乗って品川へ。赤い電車京急に乗り換えて六郷土手で降りる。多摩川の土手を歩く。この六郷の辺りは、土手が広くて広くて、なかなか多摩川が見えない。川が見えるまで、土手の上の道を歩く。ゴルフをしている人、凧をあげている人、ラジコンのヘリコプターを操縦している人、釣りをしている人、走っている人、犬の散歩をしている人、肩にインコを乗せて歩いている人。いろいろな人がいる。川が大きく蛇行しているところまで歩く。やっと近くに見えた大きな多摩川は、河口に近いせいか濁って淀んでいる。いろんなものをのせて、この川は海まで行く。
川のそばの芝生にレジャーシートをひき、ビールとおにぎりとおかずを広げる。ひばりの鳴き声、太陽があたって熱くなる背中、川を渡ってくる少し冷たい風、その中でのビール。のんびりと気持ちがいい。シートに寝転がると、草の匂いがより強く鼻を刺激する。
六郷土手から蒲田まで散歩する。小さな町工場が多い。こうゆう場所で精密機器を作っている不思議。呑川という小さな川沿いを歩く。大きな魚が腹を見せて浮かんでいる。
呑川そばの銭湯「辰己湯」へ行く。久しぶりのケロヨンの桶。湯船は、男湯との壁に沿ってある薬湯が2つと、奥の壁に沿ってある透明なのが2つ。薬湯は茶色く濁り、何か漢方系の体に効きそうな匂いがする。女湯のペンキ絵は、山の下に広がる大きな湖の図。赤い屋根の別荘やヨットも見えるけれど、水戸黄門に出てきそうな古い水車小屋や木の舟も見え、この時代がいつなのかが良く解らない。壁の向こうに少し見える男湯のペンキ絵は雪をかぶった富士山で、その富士山が明り取りの窓から入る夕焼けで赤く染まっている。銭湯のペンキ絵で赤富士が拝めるとは思ってもみなかった。
蒲田駅前で生ビールと焼き鳥。そんなにおいしくもなく、店も汚く、でも値段は安く、そしてなぜかこうゆう店は居心地がいい。隣のおじさんたちの、家でテレビのチャンネル権がない、という話をつまみにダラダラと酒を飲む。
蒲田駅前の東急プラザの屋上には小さな観覧車がある。10年以上昔、ここに来て乗ったことがある、学生時代の思い出の観覧車。夜空を見上げると、屋上にはその観覧車。まだ現役なのだろうか。今度は昼間、乗りに来ようと思う。