断片日記

断片と告知

日の出会

川口へ。川口市立アートギャラリー・アトリアで「マイ・アートフル・ライフ 描くことのよろこび」展を見る。塔本シスコさん、丸木スマさん、石山朔さんの3人展。シスコおばあちゃんは50歳になってから、スマおばあちゃんは73歳になってから、朔おじいちゃんは30代後半から、それぞれ絵を描きはじめた。病気のリハビリのため、息子夫婦と同居して暇になったため、自費出版した本が売れなくて自暴自棄になったため、と描きはじめた理由は人それぞれ。それでも何か熱いものが体の中にあったのか、3人の絵はどれも画面から何かがはじけ出ていて、見ているとこちらの体も熱くなる。そしてしばらく動けなくなる。惹かれる絵には、何かの共通点が必ずあって、その共通点さえ解れば、そこに近づけそうな気がするのに、それがさっぱり解らない。
夜は、サンシャインのそばにある日出優良商店街へ。包丁研ぎの研ぎ猫さんの家にお邪魔する。池袋にはいくつかエアポケットのような場所があって、例えば小さな飲み屋が軒を連ねる人生横丁などはその代表なのだけれど、ここ日出優良商店街もそうで、ある時期から時が止まったままの、昭和遺産とでも呼びたくなるような場所で、そんな場所がサンシャインのすぐそばにあるのがおもしろい。その商店街から横道に入り、さらに細い路地の突き当たりにあるのが研ぎ猫さんの借りている一軒家。路地の突き当たりで人も入ってこないので、玄関も窓も開けっ放しで、その外から丸見えな部屋で、台所のガス台から引っ張り出したコンロを真中に置き、鍋でしゃぶしゃぶしたり、鉄板で焼きそばをしたり。まずはじめに、カツオや鯛の刺身山盛りとご飯が出て、次にホワイトシチューとご飯が出て、さらに肉山盛りの豚しゃぶとご飯が出て、締めは山盛りの焼きそばが出て、そしてデザートはアイスクリーム。出てくるもの全てがメインディッシュという恐るべしな晩餐。小さな部屋で火を囲み、山盛りの肉や魚を食べている図は、原始共同体を見ているようで、これは野人と言われても仕方がないなと思いながら、どの料理もうまいので、食べ過ぎてお腹が苦しい。