断片日記

断片と告知

ホースの水

家と道路の間、1メートルくらいの幅のスペースに、母が無計画に植えて茫々としている草花に、ホースで水をやる。葉陰から大きな蛾が慌てて飛び立ち空に舞う。虫たちの小さい薄い体なんか溶けていきそうなほど今日も暑い。
外市2日目。朝9時過ぎに往来座に行き、設営をする。手伝いながら、自分の箱を見る。ちょっと減っているか。そうでもないか。いずれにせよ、大して売れていない。他の人の棚や箱はどうかと見ると、初参加のピッポさん、そして宿敵王子の棚がよく売れている。聞けば、すでに前回の売上を初日だけで越えているそうで、リベンジ勝負を挑もうかと頭の片隅にあった考えも、瞬時に吹き飛ぶ。
わめぞ女子4人でお昼に行く。往来座近くのカレー屋さん。わめぞ女子が3人以上集まると、なぜか「恋バナ」がはじまる。今日も昼からまだお酒も入っていないのに、カレーをもぐもぐ食べながら、なぜか真面目に恋の話、結婚の話なんかをしている。古本の話なんか一切でない。えーそうなんだー、それでいいのー、でもさー、なんて言葉がカレー屋の中をあちこち飛び交う。
午後1時過ぎ、外市を後にして、青山のHBギャラリーに向かう。雑司ヶ谷駅から明治神宮前駅まで副都心線で行く。池袋の人ごみを避けられること、駅がきれいなこと、いつでも座れるほど空いていること、このもろもろの快適さを一度知ってしまうと、JRより少々値段が高いことには目をつぶり、足は自然と雑司ヶ谷駅に向かってしまう。日曜日の表参道周辺はすごい人ごみ。お洒落な格好をした人たちがもりもりと歩いている。人ごみを避け、裏道を歩きHBギャラリーに行く。日曜日は、仕事関係の来訪者よりも、友人知人の来訪が多い。イラスト同業者の瀬藤さん、元同僚のOさん、Sさん、学生時代の友人のJちゃん、みんな暑い中、どうもありがとう。
夕方、Jちゃんとギャラリー近くの、そば粉のクレープがおいしいというお店に行く。キャラメルソースのかかったクレープと、ハム、チーズ、目玉焼きののったクレープを食べながらカフェオレを飲む。お店の外に張り出したウッドデッキで飲むお茶はなかなか楽しい。いつも歩いて通り過ぎるだけの町を定点観測することができる。Jちゃんとは学生時代から10年以上の付き合い。でも家が遠いので、会うのは1年に1回か2回くらい。今日会ったのも1年ぶりくらいか。お互いの近況、旅行の話、最近見たおもしろかった展覧会の話、おいしいパン屋の話なんかをしているうちに日が暮れる。他愛もない話の中に、友人の穏やかな暮らしぶりが透けて見えて、うれしくなる。
夜8時過ぎ、雑司ヶ谷に戻る。外市打ち上げ会場のいつもの居酒屋に行く。山本善行さんと岡崎武志さんの「ゴッドハンドと行こう古本ツアー」の人々も混じり、いつもにも増してすごい人、すごい熱気。隙間に入れてもらい、遅れを取り戻そうと生ビールをごくごくと飲む。なにやらものすごい誤解をしている問い合わせがあったらしく、その誤解を解くべきか、その誤解に近づくべきか悩み、とりあえず明日からサプリでも飲もうと決意する。
外市来場の皆様、古本を買ってくださった皆様、そしてHBギャラリーにお越しの皆様、どうもありがとうございます。次回外市は9月です。そしてHBギャラリーでのグループ展は、今週水曜5時まで。お待ちしております。
書き忘れていた。昼間、往来座のそばで、蝉の鳴き声を聞く。今年の初もの。