断片日記

断片と告知

もうISBNはいらない

グループ展にナンダロウさんが訪ねて来てくれたとき、なぜか自販機本の話になった。ナンダロウさんのトークショー「ぼくが『HEAVEN』の住人だった頃」の話からそうなったものと思われ。「HEAVEN」は、80年代初頭に自販機で売られていた、自販機本なのにエロじゃない、という不思議な雑誌だそうで、そんな雑誌を密かに作り、エロに混ぜ、ひっそりと自販機で売っていたなんて、面白いにもほどがある。それを聞いたときに、これは新しい本の売り方なのではないか、とふとひらめいた。
詐欺に近い自費出版に引っかかることもなく、取次ぎや書店に頭を下げることもなく、好き勝手に本を作り売ることができるのではないか。
鈴木さんちの玄関の前の自販機には、鈴木さんちのおじいちゃんの一代記「鈴木末吉の愛と青春の日々」が売られ、スナック渚の前の自販機では「渚ママの男の心をとろけさす料理50番勝負」(渚ママのキスマーク付き)が売られ、山田さんちの自転車置き場の自販機には「僕とヘラクレスカブトムシ、その出会いと別れ」が売られ、田中さんちの勝手口の横の自販機には「田中パパの秘蔵写真集ポロりあります」が売られていたりする。コピー本でもいい、ちゃんと製本してあってもいい。好き勝手に作った、決して大型書店には並ばないであろう、でもものすごく濃い一冊を、見ることができるのではないか。ブログで言いたいことが言える時代、ネットで本が買える時代に、あえて自販機本、それも自分の家の前でしか買うことができない、でも24時間いつでも買うことができるのだ、というのを勝手に想像し、1人で笑っている。