断片日記

断片と告知

外と内

副都心線に乗り、明治神宮前まで。青山のオーパギャラリーで岡野祥子さんの個展「折に触れる」を見て、そのまま六本木の森美術館まで歩く。六本木に行く途中、通り抜けた青山墓地は、家の近所ではすっかり鳴かなくなった蝉がまだ元気に鳴いていて、墓の隙間の所々に赤い彼岸花も顔を出し、夏の終わりと、秋のはじめが同居している。一歩一歩、歩くたびに足元からキチキチバッタが飛び出して、前へ前へと飛んでいく。公園とは違う、凛とした空気と気配。町の中とは思えない、空の広さ。いつ歩いても都会の中の大きな墓地は気持ちがいい。
六本木の森美術館で「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」展を見る。アネット・メサジェはフランスの現代女性作家。現代作家と言われる人たちの作品を見ていると、男性作家は対象が外に向かい、女性作家は対象が内に向かっているように見える。この違いは、生殖器の形の違いからくるのではないか。性器が外に向かって付いているか、内に向かって付いているか、精子を外に出す側か、それを内に受けとめる側か。その違いは、普段は気にもとめないけれど、ふとしたときに立ち上がり、表に出て、行動を起こすのではないか。そんなバカバカしいことを真面目に考えてしまうのは、彼女の作品が、暗く、内面的で、性的要素が散りばめられていたからだ。彼女にインタビューした画面を見ると、普通の外国のおばさん、に見える。そんな人がこんなものを作るのかと思うと、見るからにオカシイ人が作る何かよりも、よっぽど怖く恐ろしい何かを感じる。