断片日記

断片と告知

まく

アトリエからの帰り道の、池袋西口午後7時過ぎ。とある公園の前で、黒いスーツのコワモテの男が1人、携帯電話で話している。その前を足早に通り過ぎたとき、その男は電話に向かって一言、静かな低い声でこう言ったのだ。「処女膜か。」と。え?今なんておっしゃいました?と振り返って問いただしたいが、怖いから足を止めることさえ出来ない。家路に向かう間、あの会話はなんだったのかと、ひとり反芻してみる。もしかしてあのコワモテのおじさんは刑事か何かで、本当は「少女をマークか。」と言ったとか、それとも「情状酌量か。」と言ったとか、いろいろな空耳を考えるが、やっぱりあれは確かに「処女膜か。」と言ったはずで、いったいどういう状況でそんな言葉がでてくるのか、さっぱり意味がわからない。