断片日記

断片と告知

野球観戦

いつも行くラーメン屋のママさんに、これ、と言って差し出された封筒ひとつ。中を見ると、東京ドームの巨人戦のチケットで、そう言えば、1週間だか2週間だか前に来たとき、チケットいる?と聞かれていたのだ。誰も行く人がいなければ、と答えたはずで、どうやら誰も行く人がいなかったらしい。
東京ドームに入るのは久しぶりのこと。後楽園の周辺はよく歩くのだが、ドームの中に入ることはめったにない。確かこのドームが出来た頃に、巨人だか、日ハムだかの試合を、やはりチケットを貰って見に来たような気もするが、昔過ぎて定かではない。
後楽園駅を降り、目の前のラクーア1階の成城石井で缶ビールとつまみを買い、ドームへと急ぐ。一応、指定席券らしいが、どこから入っていいものかよく解らず、ドームの周りを半周する。入り口に立つ係りの人にチケットを見せると、7時を過ぎているので指定席にはならず立ち見になります、と言われさらに、どこからでも入れます、と言われ、そのまま大人しくそのゲートから入る。入る前には手荷物検査がある。さっき買った食料たちは大丈夫かしら、と心配になるが特に問題ではないらしい。食料の持ち込みは大丈夫だが、缶や瓶の持ち込みはダメなようで、入るとすぐに紙コップが常備されたカウンターがあり、そこに立つ係りの人に缶ビールを渡すと、もれなく缶からその紙コップに入れ替えてくれるのだ。紙コップに移ったビールを飲みながらドーム内を移動する。今日は、巨人対ドラゴンズ戦で、ドーム内はほぼ満員。立見席もすごい人で、人の頭の上から隙間から試合を見る。はじめに入ったゲートが3塁側ドラゴンズ側だったので、周りにいる人はみんな青いユニフォームを着て応援している。不思議なもので、球場内にいると、野球のユニフォームが格好よく見えてくる。試合のあった日、後楽園周辺を歩いていると、このユニフォームを着た人たちとたくさんすれ違うのだが、一度も格好いいと思ったことはなかったのに。場所のチカラなのか、その場に酔うのか、これが球場マジックなのか。応援の仕方もおもしろい。「ねーらーいーうーちー」と歌うように応援したり、2本のミニバットを前にかざして「うー」と唸っていたり。何も知らずに見ていると、怪しい宗教に入ってしまった人たちの集会を見ているような気がしてくる。そう言えば、ラーメン屋のテレビでよく野球中継を見ていて、バッターの後ろに必ず「タマホーム」の赤い看板があって、あんまりよく見るものだから、バッターよりもその看板の方が気になっていて、今日はその看板が生で見られるのか、と楽しみにしていたら、そんな赤い看板どこにもないのでした。3塁側も見飽きたので、1塁側巨人側に移動する。せっかくなら1番派手に応援している辺りに紛れ込もうと、人ごみをかき分けてじりじりと動く。着いたそこは、なんだかすごいところで、とりあえず全員オレンジ色で、普通の格好をしている人は私ぐらいで、場違いもはなはだしいのですが、お祭の中にいるようで気分が昂揚していく。「タカヒロ」と呼ばれている人が人気なようで、そのタカヒロがフライを滑り込んで取ったりすると、周りが一気にタカヒロコール一色に。そのタカヒロがバッターボックスに入り、その後タクヤという人が入り、その後オガサワラという人が入り、それぞれに不思議な応援があって、せっかくここにいるのなら自分も何かしないといけないような気がしてきて、前の人を見ながら身振り手振りを真似してみるのですが、あきらかにずれていて、あきらかにおかしいのでありました。