断片日記

断片と告知

みちくさ市でした!

朝8時、鬼子母神参道のけやき並木の入り口、第3みちくさ案内所に到着する。ほぼ同時に、昨夜のうちに古本と什器を積んでおいた車も到着。荷台から荷を降ろし、本棚を組み立て、古本をつめ、つり銭を確認し、お会計用の番台を作る。この第3みちくさ案内所のある場所は、私が小さかった頃は古本屋が、その古本屋が廃業した後は新刊本屋があった場所で、大分前にその新刊本屋も廃業してしまったのだけれど、「その場所にまた本が並ぶなんて不思議ね」と我々の棚入れ作業を見ていた近所の人に話し掛けられる。話を聞きながら、小さい頃よく「おしゃれ百科」とかをお小遣い握り締めて買いに来ていた本屋は古本屋だったのか、と30数年ぶりに判明し驚く自分がいる。古い木の棚、古い木の平台に表紙を上にして1冊1冊並べられていた本たち。子どもの目から見ても年季の入った本屋だと思ってはいたが、まさか売っている本も年季がはいったものだったとは。こうした話が聞けるのも「みちくさ市」を開催してよかったことの1つだと思う。
準備も整い、10時に「みちくさ市」スタート。鬼子母神で開催している手創り市を覗きに行く人たちで朝から鬼子母神参道は賑わっている。そこに「みちくさ市」のお客さんたちも加わり、午後になるにつれさらに人は増え、いつも寂しい日曜の商店街がすごいことになっている。ここ第3みちくさ案内所から都電の線路の方にまっすぐ大きな通りが抜けているので、道の向こうの方まで一望することができる。都電が着くたび、副都心線が着くたびに、ものすごい数の人が、踏み切りを渡ってこちらに向かってくるのが見える。ここ雑司ヶ谷の地にこんなに人がいるのは、副都心線開通のイベントのときと、お会式のときくらいではないか。番台を抜け出し焼き鳥を買いに走り、差し入れのビールと栗のように甘いお芋を食べ、おにぎりも食べ、またビールを飲む。食べつつ、番台でお会計をしつつ、明日から12月とは思えないような日の光を浴び、なかなか忙しい。風が吹くたびに空からけやきの葉が回りながら落ちてきて、本の上に、道の上に積もっていく。それがとてもきれいで、お会計をしながら、ビールを飲みながら、気づくといつも空を見ていた。
いろんな人たちが「みちくさ市」を見に来てくれた。バサラブックスの福井さん、西秋書店さん、ナンダロウさん、そしてはじめましての黒岩比佐子さん。古書現世の向井さんに紹介してもらい、「これがあのいろんな人にいろいろ書かれている武藤さん・・・。」と言ってくださったので、せっかくならばと帽子も取っておハゲも見ていただく。はじめて会った方にハゲを見せるのもどうかと思うが、他にお見せできるようなものが何もないので仕方がない。喜んでいただけたようなので、良かったと思う。他にも、一箱古本市西荻の昼本市でよくご一緒した人たちと、店主として、お客として再会できたのもうれしかった。みなさんお元気そうでなによりです。子どもさんが生まれた方もあり。出合った頃にはまだ平らだったお腹が、次に会った時には大きくなっていて、そして今日この「みちくさ市」で再会したときには、かわいい女の子が生まれている。その間、自分は何をしていたのかと言えば、ただ静かにハゲていただけで、同じ人間なのに人生とはこうも違うものなのかと不思議な気持ちになる。
昼過ぎまでは日当たりが良かったこの場所も夕方には日陰になり、寒さに震えながらも最後の最後までねばって古本を売りつづける。きっちり4時に撤収している組もあるのに、ここ第3みちくさ案内所は「わめぞ」内でも1〜2位を争うほどの貧乏人の集まりなので、ついつい人通りがあるうちは、売る本があるうちは、と貧乏根性を爆発させる。それでもさすがに4時半をまわる頃には人通りも少なくなり、寒さも限界を超え、諦めて撤収作業に入る。これがもし夏だったら、夕涼みの人たちが町にワラワラといたら、たぶん第3みちくさ案内所だけは夜の12時までだってやったかもしれない。貧乏は悲しい。誰か焼肉おごってください。
片付けを終え、夜はいつもの居酒屋で打ち上げをする。すでに夕方4時から飲んでいた岡崎さんの横に座り、酔っ払っているのをいいことに、素面では聞けないような話までいろいろと聞く。ピッポさんが来た瞬間に大人しくなる塩山さんを見て笑う。某古書店のNさんの固い真面目な話も聞く。いろんな人たちがいて、いろんなこと言って、笑ったり、怒ったりして、いつものわめぞの飲み会が終わっていく。
みちくさ市」無事終了いたしました。ご来場のみなさん、参加してくださったみなさん、どうもありがとうございました。「みちくさ市」は来年の春頃からの定期開催を目指しています。またお会いできる日を楽しみにしております。今後とも、どうぞよろしく。