断片日記

断片と告知

餅のカラ

1月3日の夜、家に帰るとドアノブに小さな袋がかかっていた。中を見るとうまそうな餅で、ついていた手紙には新年の挨拶と共に退屈くんの名前がある。退屈くんの田舎は米所なので、年末に電話した時、実家に帰るなら餅をお土産で買ってこい、と命令に近いお願いをしていたのだ。えっー、と文句を言いつつ、律儀に買ってくるところに退屈くんの優しさを感じる。そして今日、その餅を焼いて食べた。コンロの上に網を置き、ガスの火を調節しながらじっくりと餅を焼いていく。油断するとすぐにどこかが焦げるので、一瞬たりとも目が離せない。少しずつ角が丸くなっていく餅を見るのは楽しい。焼け色を調節しながらひっくり返すのも楽しい。どこかが割れて中からツルツルの柔らかい餅が飛び出してくるのも楽しい。焼けた餅にしょう油をかける。膨らんだ部分がしょう油の冷たさに驚いてしぼんでいく。まずこの餅の飛び出た柔らかい部分を食べる。その後に、残った空の餅を食べる。この空っぽの餅のカリカリしたところにしょう油が染みていくのをぱくっと食べるのが好きだ。一粒で二度おいしいとは、このことか。退屈くん、おいしいお餅、どうもありがとう。