断片日記

断片と告知

カウンターの7人

昼過ぎ、かえる食堂のドアを開ける。入り口すぐの椅子には、かえる食堂常連のSさんとお友達が座っている。こんにちは、と挨拶をして、空いていたカウンターの1番奥の席に着く。いつもの、とみどりのカレーご飯大盛り辛め、を注文する。しばらく待つと目の前にみどりのカレーが置かれる。熱くて辛いそれを口に運ぶ。美味しいものを食べるときは、丁寧に一生懸命残さず食べる。美味しいものに対して自分ができることは、それぐらいしかないからだ。食べながらかえる食堂さんと「アラスカ」について話す。確か、鮭が、熊が、鯨が、油田だか天然ガスだかが、と話していると、隣りに座るカップルに話し掛けられる。友人が毎年3ヶ月間アラスカに滞在して写真を撮っているんですよ、プロではないんですが。それからしばらくその友人の話が続き、グーグルで検索するとホームページが出ますから、とその友人の名前を紙に書いて渡してくれる。常連のSさんが、ムトーさんまた今度、と言って帰っていく。はじめて会ったカップルの2人も、ではまた、と言って帰っていく。かえる食堂は小さな店なので、カウンターには7人しか座ることができない。その7人が、いつの間にか知り合い、不思議なつながりが出来ていく。今日のシフォンサンデーは、生イチゴのソースがかかり、そこにキャラメルアイスとシフォンケーキと生クリームが混ざり合い、特別に美味しい。器の底にたまるクリームを丁寧に掬いながら、こういう店を良い店というんじゃなかろうか、とぼんやりと思う。
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