断片日記

断片と告知

アラスカ

2月に行われるグループ展は、それぞれが好きな国を選び、15人が描いた15ヶ国の絵が展示される。私が選んだ国は「アラスカ」で、行ったこともないこの国の絵を、2月の中旬までに描かなければならない。寒い国も、寒い土地も、嫌いだった。将来住むなら沖縄より南、庭にはパパイヤやゴーヤがたわわに実り、1年をとおして平均気温が18度以上で、冬でもTシャツとビーチサンダルで生活できる。そんな場所に憧れていた。わざわざ寒い場所に行き、そこに住み、厚着をして、冬になれば何度も雪降ろしをする。そんな生活をしたいと思う人はどうかしていると、そう思っていた。ある日、本を読んだ。なんでその本を選んだのか読んだのかよく覚えていない。「旅をする木」という名の本だった。写真家の星野道夫という名は知っていた。どこかで写真も見たことがあった。でも文章を読むのははじめてだった。いいな、そう思った。寒い場所を毛嫌いしていた私に、寒い場所には寒いからこそ得られるものがあるのだと、その本は教えてくれた。グループ展の話がきた時、迷わず「アラスカ」を選んだのは、そのことが頭にあったからだ。それなのに、「アラスカ」はまだ私の中では遠い場所で、絵にするまでに至らない。まだ時間はある。とりあえずまた「旅をする木」を読むことからはじめてみよう。