断片日記

断片と告知

諦観

当然、個展ともなれば数ヶ月も前から決まっていて、それに向けて少しずつは動いているものの、結局、エンジンがかかるのは直前になってからだ。搬入日まであと数日しかない、そこまで追い詰められて、はじめて頭の中が静かに整理されていく。それまでは、あーゆー絵が描きたい、こーゆー絵が描きたい、と欲求の海に溺れてじたばたし、何がやりたいのか見えてこない。それが、諦観、というのか、あるところまで追い詰められると、ぱぁー、と視界が開けていく。追い詰められた漫画家や小説家もこんな境地なのだろうかといつも思う。個展のたびにこれを繰り返し、そのたびに何か新しい絵が描けた気がして、辛かったけどやってよかったと、毎回終わってから思う。でもこれが、描けなかったらどうなるんだと、初日に壁が埋まらず白いままだったらどうなるんだと、考えると心がきりきりとする。ありがたいことにまだその経験はなく、その夢も見ないけれど。