断片日記

断片と告知

先走りじゃない仙台3日目

古本縁日、初日。すでに仙台入り3日目だが、おかしなことにまだ初日なのだ。書本&cafe magellanでの販売組みは、すでに合宿所を出ている。火星の庭での販売組みは、ゆっくりと家を出る。どこかで朝飯をと火星の庭近辺を歩き回るが、喫茶店ひとつない。定禅寺通を、何もないね、と文句を言いながら東二番丁通まで歩く。角のホテルのティーラウンジでホットケーキセットを食べる。みんな食べ方が違う。誰一人として同じように振舞う人間がいないのに、なんとなく上手くいっているわめぞという集団はやはりどこかおかしい。
火星の庭に戻って、設営作業をする。11時開店。はっきりしない曇り空だが、初日とあって、お客さんは切れずに棚の前に立つ。東京での古本市も、仙台での古本市も、棚の前に立つ人たちの背中はみな同じに見える。
昼過ぎ、仙台在住の漫画家・いがらしみきおさんがやってくる。お昼に牛タンを食べる約束をしていたのだ。女子3人と、いがらしさんとで「伊達の牛たん」へと向かう。4人でテーブルにつき、数量限定だという、極厚牛たん芯たん定食、を頼む。飲まないの?といがらしさんに聞かれ、それならばと生ビールも注文する。芯たん、とは何かと言えば、舌の先ではなく根元の辺りの分厚い部分で、それが皿の上にゴロゴロと並んでいる。仙台の牛タンよ、分厚いのになぜ柔らかい。食べながらまた、東京の牛タンとの違いに思いを馳せる。
いがらしさんは素敵な人だ。引き篭もりだからと、仙台在住なのに仙台の地理に詳しくないところが可笑しい。まだ独身の塩山さんの暮らすアパートにはじめて遊びに行ったとき、大喧嘩をしたのに、翌朝一緒にカレーを食べているのも可笑しい。そのカレーがすごく美味しかったんだよ、と笑ういがらしさんは本当に素敵だ。
いがらしさんのサイン会が20数年ぶりに東京の池袋の書店でおこなわれる。下書きが出来ない、書き直しが出来ない、耳もあまり聞こえない、その状況で求められるものを描きサインをするのは本当に大変なんだよ、と言う。いがらしさんにはじめて会ったのは、今年の4月、塩山さんとのワメトークのとき。その時私はシマリスくんの絵とサインをいただいている。そのことを思い出し、少し冷や汗が出る。
私はいま仙台にいて、いがらしみきおさんと牛タンを食べている。目の前にいるのは、ぼのぼのの、Sinkの、かむろば村への、いがらしさんだ。どうしてこうなったのか、なぜここにいるのか。人と人とが繋がっていくことは、本当に不思議で面白い。
地下鉄で仕事場へ戻るといういがらしさんと別れ、火星の庭へ戻る。店番をしながら、また棚の前に立つ人たちの背中を見つめる。ぼーっとしていると、ムトーさんですか?と声をかけられる。誰かと見れば、北海道のOです、と。Oさんは、もともと旅猫雑貨店オンラインショップのお客さんで、その縁で「死闘篇」を買ってくださり、ブログも読んでくださり、たまに感想メールなどをいただいていたのだが、そのOさんが目の前に立っている。北海道から?このためだけに?そうです、と笑っている。思いがけず、そしてうれしく、また口がパクパクとして、何を言っていいのかよくわからなくなる。是非にと、今夜火星の庭でおこなわれるパーティにお誘いする。
20時で古本縁日初日終了。ハチマクラさんの紙物と、瀬戸さん渾身の品揃えの古書往来座の売上がいい。古本縁日終了後も本棚は外に出したまま、火星の庭でのうどん・カレーパーティがはじまる。すでに火星の庭店内は詰め掛けた人でいっぱい。外に即席の椅子とテーブルを出し、飲み、食べる。手打ちうどん、うまい。インドカレー、うまい。カツオのタタキ、うまい。何を食べてもうまいのは、仙台では当たり前のことなのか。定禅寺通の大きな銀杏の木の下で飲むというのも、またいい。気持ちが良くて、道にダンボールを敷いて寝る。気持ちよく寝ていると魚雷さんに踏み潰される。この姿が何かに似ていると考えていると、四天王に踏み潰される邪鬼の姿そのままだった。
合宿組み第一陣、引き上げる。途中のスーパーで明日の朝飯を買う。ブルゴーニュ岡島さんが、また1人で乙女な部屋に引き篭もる姿が面白い。2階の女子組みは布団に転がりながら、心と体の関係について、とモア・リポートのような濃い話をなぜかしている。夜中遅くに飲みつかれた男子組みが帰ってきて、ごそごそと何かしている音が下の部屋から聞こえてくる。