断片日記

断片と告知

神輿

缶ビール片手に散歩する。池袋から西武池袋線でひとつ目の駅、椎名町駅、まで歩く。駅前にある長崎神社の秋祭りの日と重なったらしく、車一台通るのがやっとのような細い道の両脇に、縁日の屋台がぎっしりと並んでいる。道が細すぎて、向き合った屋台の屋根同士がぶつかっている。道に残された少しの隙間を子供たちが埋めている。その真ん中を人の足を踏みながら神輿が無理やり通っていく。金魚すくい、亀すくい、は見たことやったことがあるが、メダカすくい、ははじめて見た。鮎の塩焼きは、あんなに何十本も焼いてしまって、一晩でそんなに売れるものなのか。社殿に赤い袴の巫女さんが2人、おみくじをひいた人に吉凶の書かれた紙を手渡している。エイサ、ホイサ、と担がれていく神輿を見送りながら缶ビールを飲む夕暮れ。
椎名町駅から数分の、銭湯「広の湯」に行く。路地の奥まった場所にあるのは浅草の銭湯「蛇骨湯」を思わせる。脱衣所は広く、ロッカーの数だけでも50〜60はある。籐製のベビーベッドが一台ある。いくつかある鏡は金色の縁で囲まれ、顔を映せば三十路の女ではなくシンデレラか白雪姫が映りそうだ。洗い場に入ってまず驚くのが、洗い場に衝立があり、1人ずつに仕切られていること。衝立のない場所もあるが、あるほうが隣りの人を気にせず体が洗えるからか、そちらのブースのほうが人気がある。島カランが2列あり、そこにさらに衝立がありで、洗い場はかなり狭く感じる。洗い場は狭いが湯船は広く、右から、深めで小さい、浅めで大きい、薬湯、水風呂と4つある。水風呂の横には立ちシャワーのブースが2つあり、入り口にシャワーカーテンがかかっているのも珍しい。深め、浅め、ともに座ジェットがついているのも珍しく、浅めにはさらに電気風呂もついている。ペンキ絵はない。天井は鋸の歯のようにジグザグとしている。使い勝手のいいように徐々に改装していくと自然とこうなるのかもしれない、とこの銭湯を見ていると思う。
広の湯