断片日記

断片と告知

東京の空

絵の学校に通っていた頃、東京で一人暮らしをする女性と親しくなった。北海道出身の彼女の口からはよく、東京の青空は青空じゃない、と智恵子のような言葉が漏れた。それなら今見ている空は何色なのかと聞けば、これはグレーだ、と言う。言われてみれば真っ青とは程遠い、東京の空はいつも霞がかかったようなぼんやりとした薄い空だ。青空、と同じ言葉で話していても、生まれ育った場所が違えば見ている青さも違うのかと知り、不思議に思った。寒くなるにつれ引き締まっていく東京の空を見るたびに、この青空は青空ですか、と今は郷里にいるはずの彼女に向かって問いたくなる。