断片日記

断片と告知

詩ってなに

夜、大塚へ。Pippoさんが毎月開催している近代詩と詩人を紹介するポエトリーカフェ、の前日リハーサルに参加する。Pippoさんが今回紹介する詩人は、竹内浩三と左川ちかのふたり。近代詩が何かも知らず、竹内浩三は名前は聞いたことがあるがそれ以外知らず、左川ちかは全く知らず、という何も知らない私がリハーサルに参加する。
左川ちか。明治44年、北海道生まれ。詩を書いていたのは17歳から24歳までの5年間。当時の最前衛の詩誌に作品を発表。モダニズムの代表的女流詩人として嘱望されていたが、昭和11年24歳で早世。胃癌。
竹内浩三。大正10年、三重県生まれ。漫画好き。学生の頃から「まんがのよろづや」など雑誌、文集を制作。18歳で上京。19歳でいまの日芸映画科へ入学。東京生活を謳歌していたが、21歳で入営、昭和20年23歳で比島で戦死。
ふたりの人物紹介からはじまり、詩の紹介、詩の朗読、伊藤整との関係、姉への金の無心の話、などどれも面白い。が、その面白さはたぶんふたりの人間としての面白さで、詩の面白さまではよく解らない。その前後の詩のことも、その時代の他の詩のことも知らない人間に、モダニズムの詩がいかに格好良かったか、と説かれてもすぐに理解するのは難しい。
小学校、中学校、高校と、国語の教科書には必ず詩があり、暗唱させられ、今でもそらで覚えている詩もあるが、本屋で詩のコーナーに行ったこともなければ、詩集を買ったこともない。教科書で知り面白いと思った作家の小説や散文はその後も追いかけることがあるが、詩だけはぷつりと追いかけるのをやめるのはなぜなのか。ましてや、新しい詩人やその詩集など、手にとる機会も自分で発掘する気力もない。
だからこそ思う。教科書から先の、詩と詩人を埋める誰かがこの世には必要なのだ。お薦めの漫画や小説を教えてくれるように、いまこの詩が面白い、いまこんな詩人が面白い、と紹介してくれる誰かが必要なのだ。Pippoさんのポエトリーカフェはまだはじまったばかりで、普段詩を読まない人間が聞いてすぐにその面白さを理解するのは難しいが、それでも知らなかった世界を垣間見せてくれる。竹内浩三が何者かも知らなかった私に、翌日図書館で「ぼくもいくさに征くのだけれど」を借りさせるほどに。