断片日記

断片と告知

絵に描いた餅

年末に見た展示。
青山のNOW IDeA by UTRECHTで、間芝勇輔さんの個展「往住 ism」を見る。間芝さんは昨年の4月、大阪のiTohenで出会った絵描きのひとり。普段大阪で活動している間芝さんの作品を、東京でまとめて見られることがとてもうれしい。NOW IDeA by UTRECHTは、雑居ビルの2階の1室にある。白く塗られた手前の部屋が本や作品集を販売するスペース、その奥がギャラリーになっている。ここに置かれている作品集たちは、ZINEと呼ばれる外国の小冊子だったり、作家自身が小部数で作った冊子などで、よその本屋で見るものとは少し違う。その少し違うものたちが埋める空間と、間芝さんの作品はよく合っている。壁の一面にはアニメーションが映し出され、残りの壁と中央のテーブルにはドローイングの作品が飾られている。生きものにも見える、ただの線や塊にも見える、何ともいえない不思議な絵だ。たぶん何が描かれているかに意味はなく、この色と形と線の面白さの中で遊べばいいのだ。そうしてぼうっと見ているのが気持ちがいい、そんな絵だ。
六本木ヒルズ森美術館で「医学と芸術」展を見る。WAVEもシネ・ヴィヴァン六本木も無くなったこの町に思い入れはなく、できれば六本木ヒルズにも行きたくないのだが、不景気だといわれる時代に珍しく金のかかった面白い展示をするので、ついつい見に行ってしまう。森美術館にいると、セゾングループが元気だった頃の池袋のセゾン美術館を思い出す。見る側を挑発してくるような展示だからか、バブル時代の美術館のあり方に似ているからか、現代美術って格好いいと思っていたあの頃の自分を思い出すからか。「医学と芸術」展は面白かった。身体と医学をテーマにした作品、ダ・ヴィンチの解剖図から現代美術までと同列に、実際に使われてきた医学資料、医療道具が並んでいる。例えば経口避妊薬で作られた花嫁衣裳、例えば年老いたスーパーマンワンダーウーマンが入居している老人ホームなどの作品の横に、レントゲンの機械や、義手、義足、義眼、手術道具、貞操帯、車椅子、などが置かれている。どちらに目がいくかといえば後者のほうで、実際に使われていた道具の持つ力に目が吸いよせられていく。まずコンセプトありきの芸術作品よりも、必要に迫られ作られたもののほうに力があるのは当然か。だからといって、私は絵に描いた餅も好きなのだけれど。