断片日記

断片と告知

甘え上手

31日から3日まで、帰省する知人の家に通い、猫に飯をやっている。冷蔵庫の缶ビール飲み放題、本棚の漫画読み放題、で一昨年もそして今年もこの役割を引き受けた。私の家から知人の家まで、電車に乗り15分、駅から歩いて30分かかる。知人の家の最寄駅から、住宅街の中を抜けていく道と、大きな公園の中を抜けて行く道と、ふたつある道順を気分によって変えて行く。猫に朝飯をやるのはまた別の誰かの役割で、朝飯を食った猫は外に遊びに行き、夕方行く私に家に戻され夕飯を食う。夕方、知人の家の鍵をちゃらちゃらと鳴らしながら家に近づくと、どこかにいた猫が鳴きながら駈けて来る。玄関の開けた扉の10センチの隙間めがけて、人より先に猫がすべり込む。そうして、廊下の先でやっとこちらを振り返り、飯じゃ飯じゃ、と訴える。カリカリと缶詰とを半々に混ぜて皿に盛る。盛ってるそばから顔を突っ込み好きな缶詰の方から食べていく。一心不乱に食う猫を台所に残し、私はコタツのある部屋へ行く。コタツを暖め、缶ビールを用意し、今日はどの漫画を読もうかと悩む。一昨年来たときには無かった漫画を手に取り、コタツの上に積み上げる。温まったコタツに足を突っ込み、背もたれに敷いた座布団に寄りかかる。しばらくすると、飯を食い終わり、存分に体を舐めつくした猫が、腹の上に乗ってくる。ぐるぐるともごろごろとも聞こえない、鼻がつまったときの呼吸音のような音が、腹を通して伝わってくる。2年前に数日だけ通った私のことを覚えているはずもなく、どうしてそんなに自然に甘えることが出来るのか。優しくされれば誰でもいいのか。