断片日記

断片と告知

白木蓮

雑司ヶ谷の弦巻通りを歩く。都電の線路を越え、左手に見えてくる小さな公園の向い、たしかここに白木蓮の木があったよな、とわかっているにも関わらず、白い花が空に広がるようにして咲くのを見た瞬間にたじろぐ。町を歩く。道を曲がった瞬間に目に入る白木蓮、好きな人に町で偶然出会ったときのような、なんの準備もしないまま向き合ってしまったような、歩いていてこの花を見るといつもそんな気持ちになる。どきりどきり、心臓に悪いと思いながら、梅と桜の間の短い季節に咲くこの白い花の下を今日も歩く。