断片日記

断片と告知

林さんと雑司ヶ谷を歩く

昼、古書往来座林哲夫さんと、古書現世のパロパロ向井、古書往来座の瀬戸さん、と待ち合わせ。近くのうどん屋・硯家で生ビールで乾杯し、とり天うどんを食らったのち、雑司ヶ谷を歩く。

林さんとお会いするのは今日で2度目。1度目は神保町の古書会館でおこなわれていたイベント・アンダーグランドブックカフェの会場で旅猫雑貨店の金子さんに紹介してもらいご挨拶したとき。そして2度目の今日、なぜか雑司ヶ谷を一緒に歩いている。ちゃんと話すのは今日がはじめてだが、普段からブログを読んでいるからか、「ちくま」の表紙を見ているからか、はじめてという気がしない。渋谷でおこなわれている「ちくま表紙画展」に合わせて京都から上京された林さんの貴重な時間をつかって、今日は雑司ヶ谷の町を案内する。
鬼子母神の脇を抜け、けやき並木を歩き、謎のとうじゅうろう事件で笑ったのち、ひぐらし文庫へ行く。林さんが来店される機会はめったにないと思うのだが、いつもとなんら変わらないひぐらし文庫の原田さんの言動が可笑しい。
ひぐらし文庫を出たのち、目の前の焼き鳥屋・豊島屋、近くの酒屋・甲州屋、都電の線路を渡ってすぐある肉屋・肉の日高を、みちくさ市のときよくここで買うんです、うまいんです、と案内するが、雑司ヶ谷案内とはこれでいいのだろうか。旧高田小学校の横道を歩き、あそこが王子のアパートです、と指差すが、本当にこれでいいのだろうか。案内する場所がどれも私的すぎて地味すぎる。
さらに渋いけれど地味な雑ニストアを抜け、旅猫雑貨店を訪ねるがまだ開店前で、せめて何かお土産をと、赤丸ベーカリーでラスクを、小倉屋で焼きおにぎり味の煎餅を買い林さんにお渡しするが、もう何をどうしても地味すぎる。
雑司ヶ谷の名所らしい名所、作家・三角寛の邸宅をそのままを使った料亭「寛」もご案内するが、雑司ヶ谷住人の我々が、作家・三角寛とフォーク歌手・三上寛の名前の区別がついておらず、まぎらわしいからね、と林さんに笑って慰めていただくがそれもどうなのか。
あそこが昔文藝春秋の社屋があったところです、と瀬戸さんが何もない普通のマンションを指差し案内しているが、それも地味さに輪をかける。
雑司ヶ谷に不似合いなデザイナーズマンション、妙に凝ったポストの屋根、瀬戸さんの住居、とだんだん何を案内しているかわからなくなった頃、雑司ヶ谷旧宣教師館、雑司ヶ谷霊園と名所らしい名所にたどり着く。
旧宣教師館をぐるりと見たのち王子と合流し、雑司ヶ谷霊園で墓巡りをする。漱石、抱月、まこちゃん、夢二、塊多、青児と林さんを連れまわす。それぞれの墓にそれぞれの特徴があって面白いが、炎天下に歩き回ればさすがに疲れる。ぐったりした頃、けやき並木のキアズマ珈琲でお茶をする。ここでも馬鹿な話ばかりしていたが、林さんが笑ってくれるのがうれしい。
鬼子母神前から都電に乗る林さんを万歳三唱で見送る。林さん、貴重な時間をすみませんでした。
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