断片日記

断片と告知

道路の以前

家の近くに大きな道路がふたつ出来つつある。ひとつは都電の向原停留所から東池袋雑司ヶ谷鬼子母神前と線路沿いを抜けて目白通りにぶつかる道。もうひとつは池袋のビックリガードから立教大学の裏を抜け山手通りにぶつかる道。もともと細い抜け道や路地だったが、その周りの家々を壊して広げ大きな道路にしている。道になった場所に昔は何があったのか。どんな家だったか、どんな路地だったか。よく歩く道のよく目にした景色は覚えているが、ところどころの記憶が歯抜けだ。記憶にも残らない、写真にも残らない、町のそうした断片はどこに消えていくのか。人のいない町では山や林を切り崩して道を作るが、私の町では誰かの思い出と家たちを潰して道を作る。