断片日記

断片と告知

干瓢

浅草の観音裏、木村衣有子さんのよく行く縄のれんの店で飲む。古書往来座の写真展の打ち上げと、干瓢を、木村さんが書いた、わたしが描いた、仕事の打ち上げ。今日発売の京阪神エルマガジン社「うまい旅関東篇」に、木村さんは「地味な滋味」と題した干瓢の話を書き、私はその後ろに干瓢の絵を描いた。打ち合わせに行ったとき、干瓢の堂々とした丸い実と、そこから削られ伸びる干瓢の果肉、をざっくりと描いたラフがすでにあり、色は黒で、と指定があり、わたしは言われるがままにそのまま描いた。食べ物の本で真黒の頁か、と自分ひとりでは思いつかなかった絵が出来てみれば面白く、華やかな写真の並ぶ本の中で、この頁はぎゅっと締まっている。それにしても干瓢のもと、夕顔の実の、夕顔という名前からは想像できない、実のでかさたくましさ。
表紙は、千葉の某食堂の黄金のアジフライ。うまそう。エルマガ社の東京本は、よそのつくる東京本と何かが違うとよく思う。つくっている人たちが関西出身だからか、東京を見る視点が、東京に長年いる人間と少し違う。旅先で、その土地の人間が当たり前すぎて見過ごしていたものを、旅人が見つけ、面白がるような、それと同じか。だからエルマガ社の東京本は、東京の人間が見ても面白いのだ。知ったつもりになっていた街の、知らない面を教えてくれる。

うまい旅 関東篇