断片日記

断片と告知

雑司ヶ谷七福神

帰る田舎がなく、正月も東京に残る数少ない「わめぞ」民、古書現世のパロパロ向井と、雑司ヶ谷七福神巡りをする。みちくさ市でお馴染みの、キク薬局の前で待ち合わせ。喫茶「さむしんぐ」さんで珈琲をご馳走になったあと、1番端にある、お穴の鬼子母神、から七福神巡りをはじめる。
お穴の鬼子母神、とも、清土鬼子母神堂、とも言われる護国寺に近いこの場所は、雑司ヶ谷鬼子母神堂に祀られている鬼子母神像が出土した場所だ。雑司ヶ谷鬼子母神堂と違い、観光地でもなく、路地の奥に小さなお堂が建つだけの目立たない場所だが、雑司ヶ谷民にとってここは馴染みが深い。10月の、雑司ヶ谷が1年で1番盛り上がる祭り「お会式」の、10月17日の講の出発場所が、ここ清土鬼子母神堂なのだ。清土鬼子母神堂の前から出発した講は、不忍通り目白通り鬼子母神通り商店街、欅並木を練り歩き、雑司ヶ谷鬼子母神堂までたどり着く。
清土鬼子母神堂は相変わらずこぢんまりとした佇まいだが、お堂の横に新しく吉祥天が祀られており、小さなスタンプ台が設けられている。いつもは静かな場所だが、今年は七福神巡りをする人たちで、賑わっている。手に手に、七福神の色紙か地図を持ち、並んで御朱印スタンプを押している。わたしもお参りをして、スタンプを押す。
弦巻通りに出て旅猫雑貨店の前を通り、毘沙門天のある清立院を目指す。旅猫雑貨店は元旦から営業しており、店の前に雑司ヶ谷にちなんだ雑貨や本を並べ、正月休みで寂しい弦巻通りを明るく盛り上げている。
雑司ヶ谷に長く住んでいても、清立院に入るのははじめてだ。清立院の前には欅の大木が残る三嶽坂があり、坂の一番下には小さな小さな祠がある。祠にはミタケちゃんと呼ばれる猫が住んでいて、いつも日向ぼっこをしている。今日も日向ぼっこをしていたミタケちゃんを挨拶代わりに撫で、清立院の階段をのぼる。お参りをしてスタンプを押す。高台にある清立院の境内からは少しだけ雑司ヶ谷の街が見渡せる。雑司ヶ谷に長く住んでいるのにはじめて見る景色だ。雑司ヶ谷や南池袋のこのあたりは、お寺や神社の多い場所だが、気楽に入ることのできる場所は意外と少ない。七福神巡りのお陰で、入ったことの無い場所にさらりとお参りできるのがうれしい。
大鳥神社で恵比寿を、鬼子母神は混んでいたので後回しにして、法明寺参道に面した観静院で弁財天を、そのまま法明寺を、東通りに出て中野ビルの布袋尊を、清立院で毘沙門天を、お参りし、スタンプを押す。よく知った街のよく知った道を、いつも歩かない順序で歩く。七福神と書かれた赤いのぼりで足を止めると、いつもと違う街が見える。
雑司ヶ谷鬼子母神堂に最後に周る。三箇日はいつでも混んでいるが、今年は欅並木の入り口まで参拝の列が伸びている。最後尾に並び、七福神の地図を眺めながら、ゆっくりと参拝の順番を待つ。地図には、いまの雑司ヶ谷のほかに、安政4年の「江戸切絵図 雑司ヶ谷音羽絵図」も載っている。鬼子母神、法明寺、護国寺などの寺社はそのころからあり、みちくさ市鬼子母神通りも、その先の早稲田まで続く宿坂もそのころからある。松平出羽守の屋敷はでかい、それに比べてわたしの家の辺りは昔は畑か、などといまと昔を見比べて楽しむ。白酒や焼きそばの屋台を横目で見ながら30分以上待ち、やっとお参りの番が回ってくる。今日一番多い賽銭を入れ、一番念入りにお願いし、カン、と鐘をひとつならす。七福神最後の大黒天は、境内の隅にある、おせん団子、の小屋の中にあった。
鬼子母神が混んでいなければ、土地勘があれば、1時間弱で周れ、普段とは違う雑司ヶ谷が見られる、雑司ヶ谷七福神巡り。思っていた以上に楽しく、スタンプを集める喜びもあった。七福神巡りは正月に限ったことでもないので、1月の古書往来座外市」のついでに周ってみるのはどうでしょう。
ちなみに古書現世のパロパロ向井は、財福の神様だから、と張り切って賽銭をあげた布袋尊に、その賽銭をはじかれていました。今年もきっと貧乏でしょう。

雑司ヶ谷七福神
■大黒天:鬼子母神堂 豊島区雑司ヶ谷3-15-20
■恵比寿:大鳥神社 豊島区雑司が谷3-20-14
毘沙門天:清立院 豊島区南池袋4-25-6
■吉祥天:清土鬼子母神堂 文京区目白台2-16
■弁財天:観静院 豊島区南池袋3-5-7
布袋尊:中野ビル 豊島区南池袋2-12-5
■福禄寿:仙行寺 豊島区南池袋2-20-4


雑司ヶ谷七福神の色紙、地図は、雑司ヶ谷鬼子母神寺務所か、鬼子母神の参道、欅並木に建つ「雑司ヶ谷案内処」で手に入ります。
雑司ヶ谷案内処
〒171-0032 東京都豊島区雑司が谷3-19-5
03-6912-5026

「外、行く?」
第24回 古書往来座 外市〜軒下の古本・雑貨縁日〜
南池袋・古書往来座の外壁にズラリ3000冊の古本から雑貨、楽しいガラクタまで。敷居の低い、家族で楽しめる縁日気分の古本市です。2011年、「外」はじめ!
■日時
2011年1月22日(土)〜23日(日) 
雨天決行(一部の棚などは店内に移動します。)
22日⇒11:00ごろ〜19:00(往来座も同様)
23日⇒12:00〜18:00(往来座も同様)
■会場
古書往来座 外スペース
東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階
http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/
→池袋ジュンク堂から徒歩4分
東京メトロ副都心線雑司が谷」駅・2番出口から徒歩4分
都電荒川線鬼子母神前」電停より徒歩6分
■主催・わめぞ  http://d.hatena.ne.jp/wamezo/