断片日記

断片と告知

おおきな木

大きな木を切り倒すのを見てしまうと、人殺しの現場を見てしまったようで気分が悪い。何十年何百年分を、鉄の刃が1日で切り倒していく。金があればこの土地を買うのにと思うが、金を持つ人はこういうことに金を使わないのだ。雑司ヶ谷のカブトムシの何割かが、と瀬戸さんが言う。カブトムシだけじゃない、蝉もオケラもミミズも蛙も何割かもだ。切り倒すくらいなら木のないつるっぺたな埋立地でも買えばいいのに、と思うのは金のない人間の妬みか。歩きたくなる路地が雑司ヶ谷から減っていく。わたしが子どものころ見ていた景色が正しいわけではないのだから、とごまかしごまかし、でももう大好きだったその路地を歩けない。