断片日記

断片と告知

東京の空

西池袋でカレーを食べた帰り道、雲ひとつない青い空を見上げながら、東京のお正月っぽい、と明日長野に帰る友人が言う。
年末年始、友人たちがSNSにあげる、それぞれの故郷の写真を見るのを楽しみにしているが、雑煮の違いや家族の写真に気をとられ、どの町にも同じようにあるはずの空のことは気にしてなかった。言われて友人の写真を見てみれば、正月の長野の空は雪をはらんだまだらな灰色。西池袋で見上げたビルの間の空は、人と車が少なくなる年末年始の東京の、だからこその青い空か。
石神井書林の内堀さんと、近所の喫茶店で目録の打ち合わせをするはずが、その日の朝に、神宮球場に行きませんか、と電話で誘われた。11月、プロ野球が閉幕したあとの神宮で、高校と大学の野球大会が行なわれているとは知らなかった。訪れた日はちょうど、第48回明治神宮野球大会の決勝の日。対戦相手は星槎道都大学日本体育大学だ。
野球場に誘った割りにたいして野球を見もせずに、目録に描く文字の説明を少しして、内堀さんが買ってくれた弁当を食いながら、空と球場をずっと見ていた。この大会、客は内野にしか入れないそうで、一塁側の道都大の応援団と、三塁側の日体大の応援団から先は、ずらっと並んだ空席と、その向こうに大きな空が広がっている。ネット裏から見た扇形に広がる芝の緑、赤い土、白いラインのうえを、陽とともに野球場の大きな照明の影が動いていく。
この空をね、見せたかったんですよ。この時期の神宮でしか、この空と影は味わえないんですよ。
見慣れたはずの東京の、そこにしかない青い空がある。

石神井書林の古書目録102号に題字と作家名を描きました。今号の特集は「半年の収穫 一年のはじまり」。内堀さんが2017年の下半期で集めた古書で、2018年のはじまりの目録を作りました。
今週末から荻窪の本屋Titleでも販売されます。

■本屋Title
〒167-0034 東京都杉並区桃井1-5-2
TEL 03‐6884‐2894
営業時間 12:00 – 21:00
定休日 毎週水曜・第三火曜