断片日記

断片と告知

コロナの春 3月17日から3月23日

3月17日金曜日

曇り。ベーコン玉ねぎトマトパスタ。Sは往来座へ。告知、メールの返信。夕方、Sとオリコンをのせた台車を押してM家へ。台所のコンロまわりの工事のため戸袋に数十年入れたままの不要な食器の処分。オリコンに詰め往来座に運ぶ。6時過ぎ、Sと豊島区役所へ。予約なしのワクチン接種4回目。オミクロン株対応のファイザー。ワクチンコーナーにスタッフはたくさんいるものの、待っている人は誰もおらず。書類書き、検温、書類チェック、問診などテーブルを周り、注射へ。痛いですか?と聞くと、痛くないですよ、とか言って痛かったらどうしよう、と注射先生。射ち終わりまた書類チェック。あんまり混んでいないんですね、と言うと、遅い時間がわりと混むんですよ、とチェックの人。終えて、往来座に戻る。不要な食器の商品化とゴミへの仕分け。見るまですっかり忘れていた懐かしい鉄瓶が出てくる。asさん、ru先輩、MZちゃん。本搾り。大倉で買い物。連日遅くまで飲んでいたので今日はさっと片付けてすぐに帰る。注射をした腕が少し重い。夕飯は、ごぼう小松菜豆もやし豚つくね鍋。先日ハナマサで見つけたはっさく。「水もれ甲介」の続きを見る。チャーミーを好きになる男はろくでもないやつばかり。なにも悪いことしていないチャーミーが殴られ、あやまんなさい、と言われていて頭にくる。都電の鬼子母神停留所にあった服屋や鬼子母神の境内が映るのがうれしい。S家泊。

東京都の感染者数、631人。

 

3月18日土曜日

雨。芽キャベツ玉ねぎ豚肉のカレー。高木豊ダルビッシュの対談動画、ダルビッシュの試行錯誤、考え方と伝え方がとてもクリアで驚く。Sは往来座へ。昨晩のワクチンのせいか、頭痛、倦怠感がひどく、1日寝転がって過ごす。夜、M家で母が作った鶏と玉子の煮物をもらう。往来座へ。本搾り。以前働いていた本屋のSGちゃんから飲み会の誘い。誘ってもらってうれしい気持ちと会うのがめんどくさい気持ちのどちらもあり返信できない、と愚痴をこぼすと、わかるー、とn。ツルハ、大倉で買い物。夕飯は、トマトアボカド、ごぼうネギ汁、母が作った鶏と玉子の煮物。「水もれ甲介」見るも体調悪くて途中で寝落ちする。S家泊。

東京都の感染者数、627人。

 

3月19日日曜日

晴れ。体調戻る。MZちゃんにもらった茹でたパスタに絡めるだけの広島菜のペペロンチーノ、Sは広島菜の豆乳レモンクリーム。ずん喫茶は清瀬。今日は3年9ヶ月ぶりの牧志公設市場リニューアルオープンの日。ツイッターにあがるセレモニーや市場界隈の写真を追って見る。いつもより2時間ほど早く出、Sと往来座へ。鬼子母神の手創り市に合わせ、往来座の外に最近入荷したブツを少しだけ並べる。終えて、S家に帰り、掃除、洗濯。文字描き。夜、池袋駅で新幹線のチケットの発券。往来座へ。MZちゃん、saさん。本搾り。昼出したブツはぼちぼち売れたとのこと。大倉で買い物。夕飯は、ごぼう小松菜里芋笹かま鶏つくね鍋。麦チョコを少し。早く寝る。S家泊。

東京都の感染者数、549人。

 

3月20日月曜日

晴れ。昨晩の鍋の残りの汁と納豆ご飯。Sが先に家を出る。後から出てM家に寄り、荷物を持って往来座でSと合流、目白駅へ。山手線で品川まで、新幹線のぞみで岡山まで。車窓から見える山々の色が明るく低い。北陸新幹線から見える山とはだいぶ違う。山がふわっとしている。岡山で黄色い電車に乗り換え倉敷へ。車窓からラブホテル街が見え、昔来たときもラブホテル街だ、と思ったことを思い出す。倉敷駅から記憶を頼りに歩いていく。天満屋、アーケード街、角のうどん屋、前は中国画材だった画材屋、恵比寿商店街。鶴形山まで来るとアーケードがなくなり美観地区に入っていく。店も人も多く、こんなに賑やかだったっけと歩いていると蟲文庫に着く。前は美観地区の端の人通りが途絶えるあたりに蟲文庫があったが、いまはこのあたりまで店が並び賑やかだ。蟲さんに挨拶し、帳場の畳スペースに荷物を置かせてもらう。まずは乾杯で本搾り。しばらく前に、最近はなにを飲んでますか?と蟲さんに聞かれ、本搾りのグレープフルーツ味、と答えると蟲さんも同じで驚いた。一息ついてSと搬入。入って右側の空けてくれた壁に絵を貼っていく。まごえもん椿油、椿サコッシュ、今回のために作った蟲文庫サコッシュも並べる。ここはもう少し広かったような、狭かったような、と記憶のなかの蟲文庫と現実をすり合わせる。終えて、美観地区の端まで歩き、真ん中の倉敷川沿いも歩き、東横インにチェックイン。エレベーターの真横の部屋。蟲さんに教えてもらったスーパー山陽マルナカに寄り、こごみ、肉、カキなど買い、缶チューハイ飲みつつ、鶴形山へ。裏手の墓地を迷ってうろうろ。裏手の石段に続く道を見つけて蟲文庫へ。本搾り、蟲さんが作った牡蠣のアヒージョ、卵焼き、じゃがいもと菜の花炒め、こごみの天ぷら、柚子胡椒味のホタルイカ、山椒の見がのった煮卵と角煮。この卵焼きしらすが入ってる、ホタルイカに柚子胡椒入ってる、この卵にのってる山椒うまい、とS。カキもホタルイカも、うまい、うまい、と言いながらほぼSがひとりで食べている。蟲文庫の石垣のある裏庭に1日に何回も顔を出す猫のトラミさん、脚立から落ちて亡くなった友人が作った仕切り板、仕切板の窓口のわざとガタガタさせた線、スズメバチが入ってきたときの対処法、猫の餌缶を開けようとするイタチ、自転車で倒れたおじいちゃんが江田島から見た原爆のピカ。本が積み上がった帳場にぎりぎり出したちゃぶ台を3人で囲み、飲み食べ話す。ずっとこのちゃぶ台で蟲さんが作る飯を食べたかったのでうれしい。帰り道、遠回りして銭湯「えびす湯」の前を通る。蟲文庫からこんなに遠かったっけ?とまた思う。広い狭い近い遠い、記憶とすり合わせていく。ホテル横のローソンで買い物。東横イン倉敷駅南口泊。

岡山県の感染者数、38人。

東京都の感染者数、270人。

 

3月21日火曜日

曇り、ときどき小雨。SはWBCを見るため朝7時に起き、テレビの前に陣取っている。8時に起き、ひとりで1階のロビーでビュッフェ形式の朝飯。ジャガイモのポタージュ、卵焼き、カボチャの煮物、焼きそばを少し。具がほとんどなくカサついた焼きそばがとてもうまい。食べ終え、ローソンでSに頼まれたしじみ70個味噌汁を買う。部屋に戻るとSがテレビの前で、よし!とか、うまい!とか叫んでいる。Sの朝飯はしじみ70個味噌汁。テレビでWBCを見ているSを残し、ひとり商店街を抜けて蟲文庫へ。美観地区周辺はすごい人出。「百椿図」巡回展倉敷編の初日。蟲文庫の奥の帳場で蟲さんがいれてくれた茶を飲む。龜鳴屋の本に署名を入れる。『古本マニア採集帖』にも出てくるKRさん。映画の自主上映をしている方。昼過ぎ、WBC見終えたSが来、石垣のある裏庭に椅子を出し、手帳にメモをしている。腹が減ったので蟲さんが教えてくれた台湾料理店・銀湾へ。蟲さんが骨折したときに通っていた病院のすぐ横にある。瓶ビール、焼き餃子、ルーロー飯、ワンタンメン、汁なし麺。ルーロー飯と餃子はSと半分ずつ食べる。うまい。味も女将さんもとても優しい。鶴型山沿いの石仏を見つつ、蟲文庫に帰る。MZちゃんの高松の友達。トラミちゃんがよく日向ぼっこをしているという上の物干し台を見せてもらう。Sは昨晩の飲み過ぎ食べ過ぎで腹が壊れ、一時ホテルで仮眠。裏庭に猫のマルちゃんが顔を出す。夕方、蟲文庫を抜け出し銭湯「えびす湯」へ。女将さんがかわり不定休になったようで前に来るまでやっているかわからなかったが、のれんがさかっているのを見てほっとする。古い木造の2階建ての1軒屋、外に面した入り口から男女が別れ、左手に女湯ののれんがさがる。1階の瓦屋根の上に、温泉マークと「健康浴石風呂えびす湯」と電話番号の書かれた看板がのる。入ると、右手に番台。入浴代450円払う。下足箱は見当たらず、脱いだ靴はそのまま土間の隅に置いておく。脱衣場は壁中手作りの手芸的なものが貼られたり吊られたりでとても派手派手。左手の壁沿いに木製ロッカーがあるがその前に牛乳石鹸のでかいのれんが目隠しのように垂れ下がっている。真ん中にベンチ。洗い場の入り口右手に赤いお釜の髪乾燥機、左手に古い冷蔵庫。洗い場。入ると右手に流し、左手の壁沿いにカランが5つくらい並ぶ。一番奥にシャワーヘッド付きのいまどきのカランがひとつある。カランの湯はとんでもなく熱く、ブシャーと勢い強く出るため、手ぬぐいではねる湯をよけつつ桶にためる。桶は黄色いケロリン。右手の男湯との仕切りの壁の真ん中くらいに2メートル四方の真四角の湯船がくっついている。湯船の縁は御影石、中は水色のタイルが貼られている。湯船は腰下くらいまであり深い。腰掛け程度の出っ張りが四面すべてにくっついている。右手奥から常に湯が吹き出している。温度はだいぶ熱め。床は、30センチ100センチくらいの長方形の石が10センチくらい周りを空けて格子状に嵌め込んであり、あいだの溝を水が流れていく。石の湯船も溝も倉敷でしか見たことがない。男湯との天井の真ん中に四角い湯気抜きが開いている。客は老女がふたり、出るときに、お先に、ごゆっくり、と声をかけてくれる。女将さんはつくしのハカマを取りつつ、客の老女と話している。牛乳あるの?今日火曜日なのに、取りに来て、そっちの冷蔵庫じゃなくこっちの。洗い場入り口のガラス戸に「えびす湯」を取材した新聞が貼られている。岡山に190軒あった銭湯がいまでは7軒に、ここえびす湯もボイラーなどの故障で1千万の修理費がかかり、寄付を集めている旨が書かれている。銭湯に来るのに千円札しか持って来ず、お釣りでもらった550円を女将さんに、少ないですが、と持っていく。どこから来たの?東京でしてら小岩の「亀の湯」に入ってください、ビートたけしが行くいいお湯ですから、と女将さん。これから1千万円返さなきゃいけない、とも。10年くらい前にも来たんですが、こんなに派手派手でしたっけ?と聞くと、そうよ、このまま、女の子たちがね、かわいいーって写真撮っていったりするの。蟲文庫への帰り道、トンネルを目指したんだけど道に迷った、とSから電話。鶴形山の裏手にいると言うので阿智神社で待ち合わせる。山の上には見晴台もあり瓦屋根の町並みが一望できる。昔このあたりが島だったころの名残の地形。眺めているとSが来る。境内にたくさんある石座を見、ぐるっと回って裏の石段から蟲文庫に戻る。Sはまた裏庭で手帳にメモしている。閉店間際に動画の撮影。閉店後、Sとスーパーニシナへ買い物。前に来たときもここで材料を買い蟲さんに持っていった。岡山産の野菜、往来座への土産買う。飲みながら蟲文庫に帰るが、あちこちに用水路がふわっと口を開けているので油断がならない。蟲文庫に戻り帳場のちゃぶ台で飲み食べる。本搾り、うどの酢味噌和え、鶏をカリカリに焼いたもの、肉、山椒玉子、蟲さんが好きだという岩下の新生姜が入ったちぎり天、トマトレタスのサラダ、スナップエンドウ、いちご。用水路に落ちて亡くなる人も多いが数が多すぎてどうにもできない。朝ドラに出てくる古本屋と似ているためか、デラシネ、と言いながら通り過ぎる人も多く、最近文芸の棚にささっている五木寛之の『デラシネの旗』が飛び出ている事が多い。それぞれの苦手なこと、親しくない人へのメールの返信。年取ってできなくなったことと昔から苦手なこと。数字。今日は裏庭を背に店内を見ながら飲む。右横に蟲さんがいて台所と行ったり来たりしている。左横の机との隙間にSが座っている。やっと蟲文庫に来て飲んでいるという実感がわく。黒服の立つスナック街を抜け、ローソンで買い物してホテルに帰る。東横イン倉敷南口泊。

岡山県の感染者数、125人。

東京都の感染者数、877人。

 

3月22日水曜日

曇り。SはWBCを見るため今日も7時に起きテレビの前でバタバタしている。8時に起き、1階のロビーへ。今日は持ち帰り用のタッパに詰め、部屋で食べる。コーンポタージュ、コーヒー、卵焼き、きんぴら、ミートボール、ブロッコリー、焼きそば。今日もパサパサの焼きそばがうまい。Sにコーヒーと卵焼きを分ける。村上のホームラン。WBCを見ているSを残し、ホテルを出る。美観地区を端まで歩き白壁通りを越える。確かこのあたりに銭湯があったはずと路地に入るとすぐに銭湯「船五湯」の建物を見つける。数年前に廃業したが建物はまだ残る。入り口のマドにはまった緑と黄色のステンドグラス。10年くらい前に立ち寄ったときは倉敷に銭湯が3軒残っていたが、いまは「えびす湯」だけ営業している。アイビースクエアの裏手を通って蟲文庫へ。松江帰りのNT先輩が寄ってくれる。帳場にいると、開けっ放しの入り口から外を歩く人たちの声、古本だってー、がよく聞こえる。はじめて古本屋を見る人、入る人も多い。店内をちらっと見て出ていく人、クウネルに出てましたよね、と蟲さんに話しかける人。今日も人出は多く、右手の駅の方から来て左へ抜けていく。たくさん左へ抜けていくが、行くほど戻って来ない、どこに消えていくのかわからない、と蟲さん。今日もトラミちゃんが顔を出し、ときどき猫飯を食べていく。ツイッターを見るとWBCで日本優勝したところ。昼過ぎ、ホテルをチエックアウトしたSが来、しばらく裏庭で手帳にメモをしている。調子が悪いSに、蟲さんが梅酢のお湯割り作りを飲ましてくれる。トンネルの先に大きな犬がいたと蟲さんに報告している。昼過ぎ、蟲さんと別れ、倉敷中央通りを越え喫茶かどの横を入り、以前来たときに歩いた用水路沿いに出る。倉敷の用水路は金沢よりも大らかに、柵もなく街の中を横たわっている。水辺におりていく階段もあちこちについている。倉敷駅の前でWBC優勝の号外をもらう。山陽新聞。倉敷から黄色い電車に乗り岡山へ、瀬戸大橋線に乗り換えて児島まで。車窓には平らな田園風景が広がっている。児島が近づくとトンネルが増え、耳がきーんと詰まる。児島駅から海側に出、海沿いの道を歩いていく。蟲さんが行っていた飯屋は見当たらず。缶ビール飲みつつ歩き、コンビニで買ったサンドイッチを防波堤に腰掛けて食べる。釣り竿をさした自転車の少年たちがWBCのことを話しながら自転車で去っていく。ボートレース場と眼の前の飲み屋、小さな造船所、浜、野良猫。岬の端っこまで行こうと歩きだしたが以外に遠く、途中に見かけた石投げ地蔵の横から山に入り、鷲羽山の第2展望台へ。瀬戸大橋、瀬戸内海、讃岐富士が見える。瀬戸内海は霞がかかって遠くまで見渡せないかもしれません、でもそれが瀬戸内海っぽい景色でもあるので、と蟲さんに言われて来たが、浮かぶ島や四国の山々の裾野に本当に霞がかかっている。空も海も広くて気持ちがいい。しばらく眺め、電車の時間もあるのでまた海沿いの道を児島まで引き返す。古い漁師町といった町並みで路地の奥まで歩きたくなるが、時間がない。児島から岡山へ、コインロッカーに預けていた荷物を受け取り、目の前の回転寿司三崎港へ。奥の二人がけのシートに並んで座る。タッチパネルで注文すると新幹線にのって目の前まで皿が届く。生ビール、マグロの三貫盛り、サバの押し寿司、いくら、いわし、など。赤酢なのか飯がほんのり赤く、飯も魚も東京で食う三崎港よりもだいぶうまい。新幹線の時間まで1時間もなく、慌てて頼み平らげる。新幹線構内で土産物を買い、セブンイレブンで瀬戸内レモンの缶チューハイを買い、新幹線へ。飲みながら帰る。下痢のその先は下痢とは真逆の完全停止なんだよ、とSは調子が悪く、文庫を読み静かにしている。ときどき思い出したようにWBCのすごさを話し、でも接戦じゃないと面白くない、と贅沢なことを言っている。品川から山手線で目白まで。往来座に土産物を置き、S家に帰る。Sは蟲さんにもらった梅酢をヨーグルトにかけたり、湯でわったりして飲んでいる。S家泊。

岡山県の感染者数、51人。

東京都の感染者数、373人。

 

3月23日木曜日

雨。納豆ご飯。Sは納豆ふたつ卵ふたつにMUさんにもらった梅酢も入れている。今までも梅とか刻んで入れてたけどこれはちゃんとウメと納豆が混ざってうまい、とS。Sは往来座へ。文字描き、絵。夜、M家に寄り母が三ノ輪の商店街で買ってきた鶏の塩焼きもらい、往来座へ。saさん。本搾り。倉敷駅でもらった山陽新聞の号外を見せる。蟲文庫の裏庭が気に入ったSは、あそこは思索の場だ、なんたる場所だろう、と何度も言う。大倉で買い物。夕飯は、トマトアボカド、さつま揚げごぼう白菜汁、鶏の塩焼き。先日寝落ちした「水もれ甲介」の続きを見る。兄は弟を思い、弟は兄を思い、話がややこしくなっていく。鬼子母神境内でふたりが相撲をとっている。M家泊。

東京都の感染者数、908人。