断片日記

断片と告知

へたも絵のうち

北浦和埼玉県立近代美術館で「熊谷守一」展を見る。北浦和の駅を降りるのは久しぶり。こないだ来たのは何年前の何の展覧会のときだったか。全く思い出せない。こんなに駅の周りがひらけたのか、商店街も華やかになって、と時間の流れを感じながら歩くこと数分。駅前すぐの公園の中にあるはずの美術館にいつまでたってもたどり着けない。タヌキに化かされたかと、立ち話をしているおばちゃん2人に道を尋ねると、美術館は駅をはさんで反対側。西口と東口を間違えていた。駅を越え、美術館側の商店街に降り立つと、数年前とほぼ同じ、そんなに簡単には変わりませんよと、町が静かに笑っている。
熊谷守一の絵はうまい。若い頃から、学生の頃から、あのタッチになる前から、すでにうまい。そのうまさが、どうしてこうして、ああも単純で力強い絵になったのか。裸婦も猫も虫も花も、みんな一緒。全てたくましく生きるものたち。それを突き詰めていくと、ああゆう線と形と色になるのだろうか。最後のコーナーの写真も良かった。緑に囲まれた守一さんと守一さんの家。素敵だった。