断片日記

断片と告知

夏と死体

夏の道路にころころと転がる蝉の死体。他の虫の死体はほとんど道路で見ないのに、この蝉の死体だけは節操もなくころころと転がっている。長い間、土の中にいて、やっと出てきたと思ったら、鳴きわめき、交尾をして、道路に転がる。その生き方にも、死に方にも、節操がない。それとも必死過ぎて他を省みる余裕がないのか、どうでもいいのか。
カンカンと干照る道路でのたくるミミズ。子どものいたずらか、鳥のくちばしから落ちたのか、近くに土がないような夏の道路でのたくるミミズ。まだ生きていれば葉っぱの先に乗っけて湿った土のあるところまで運んでやる。すでに死んでいれば、その干からびた体をじっと見る。
電車の線路、その踏み切りの溝にカエルの死体。電車に潰されひらひらと、日に照らされカサカサと、死体というより、昔からこういうカタチだったと思えるような、よくできた1つのオブジェ。
夏に出会う死体たちは、みんなカサカサとよく乾燥し、あまり死体という気がしない。踏み潰せば粉になり、そのまま散ってしまいそう。