断片日記

断片と告知

アヒルの話

いつまでも心のどこかに引っかかって忘れられない話というものは、感動する話でもなければ、泣ける話でもない。感動する話は感動してしまえば終わりだし、泣ける話は泣いてしまえば済むからだ。
例えばこんな話。飲み会の席で、友人の彼氏がしてくれた話。彼氏の実家は九州の田舎で、庭で家鴨を飼っていた。庭の中を横切るようにして用水路があり、その流れは隣りの家の庭も通り、そのまたずっと先まで、村の中を通りながら大きな川まで続いていた。家鴨はその用水路で放し飼いにして飼われていた。気ままに暮らしていた家鴨たちは、台風で用水路が増水するたびにどこかに流され消えていった。それでどうなったの。最後には全部いなくなったよ。ただそれだけの話。