断片日記

断片と告知

ワメトークでした

12時過ぎ、リコシェの豆ちゃんと古書往来座に集合。荷物を台車に載せて上り屋敷会館を目指す。会館にはすでに、古書現世のパロパロ向井、立石書店ブルゴーニュ岡島の姿。少し遅れてピッポさんがライブの機材を持って参上。わめぞ民も続々と集結し、会場の設営をしていく。設営自体はすぐに終わり開演時間までまだ間があるので、広い座敷に思う存分寝転がる。気持ちのいい日曜日の畳の上、自分が何をしにここに来たのかを忘れそうになる。四の字固めをかけたり、サソリ固めをかけられたり、NEGIさんに貰った漫画「劇画 近藤勇」(水木しげる・著)を読んだりしているうちに、開場の時間となる。トークがはじまる前に、缶ビールを1本飲んでおく。「わめぞ」関係者が、アホの子を見守る授業参観の父母のような目でこちらを見ている。肝心のアホの子自身は、アホゆえに今の自分のこの状態が緊張なのかなんなのかがイマイチわからず。わめぞの父母たちに、大丈夫?と真顔で聞かれても、よくわからない、と返事する。
会場は満席。16時過ぎに開演。版元アストラの担当Oさんが、以前に葬儀屋で働いていたという経験を活かし、トーク開会の辞を葬式風に述べることからはじまる。黒スーツ黒ネクタイのOさんが、淡々と震えるような声で読み上げる塩山さんへの弔辞は、まじめに読めば読むほど可笑しい。Oさんは葬式について書いた「葬」というミニコミも出版している。今日の弔辞も、そのミニコミも、本人はものすごく真面目に取り組んでいるのに、その真面目さはどこか世間とズレている。それがこの人の面白いところであり、凄いところでもある。
塩山、ナンダロウ、武藤、の名前が紹介され、壇上にある座卓を囲むように座り、テーブルにはビールを置き、飲みながらトークがはじまる。横には塩山さん、正面にはナンダロウさんがいて、客席のほうは恐ろしくて見られないので、この2人の顔だけを見て、ポツポツと話す。マイクを持つのも、マイクを通して自分の声がどこかに響くのも、気持ちが悪くて仕方がない。前半は大したことも言えず撃沈。
休憩が入り、ピッポさんとウサリンのライブがはじまる。客席のほとんどがエロ漫画業界のオヤジさんばかりという場所で、ウサギの着ぐるみを着た何かと歌い踊るピッポさんは神々しかった。どんな場所でも、どんな状況でも、自分の歌や、自分の好きな詩を、信じて伝えることに全力をつくす。半端な根性の人間にできることじゃない。ピッポさんの歌を聞き拍手をしているうちに、固まっていた気分が徐々にほぐれていく。
トーク後半戦、開始。ピッポさんの歌、アルコール、会場に慣れた、ことにより、前半よりは好き勝手に話せるようになる。途中、塩山さんの新刊「出版奈落の断末魔」の装画を描かれた漫画家・いがらしみきおさんが登場。いがらしさんは耳が悪かったり、癌を患ったりと大変なのだが、それさえも笑いに転換していくのが凄い。いがらしさんと塩山さん、再会したのは2年前。それまでの音信不通の間、いがらしさんは、塩山さんは死んだ、と思っていたそうだ。ジャンルは違えど同じ漫画業界なのに、1度袂を分かつとそんなものなのだろうか。相変わらず客席は直視できないけれど、爆笑している声が聞こえてくる。やっと慣れてもう少し話せるかも、と思ったあたりで時間となる。ワメトークにご来場の皆さま、ありがとうございました。大した話も出来ず反省しきりですが、少しでも楽しい気分になっていただけたならうれしいです。
塩山さんのサイン会の列を横目で見ながら、いがらしみきおさんに近づき、単行本にサインしていただく。「ぼのぼの」のシマリスくんが首を傾けて「ね?」って言っているところだ。うれしい。打ち上げ参加者を引き連れて、目白駅そばの居酒屋へ行く。トークが終わり、ホッとしつつ、打ち上げ幹事として働きつつ、飲んだくれる。岡崎武志さんに、荒川洋治の出現がどれだけ凄かったかを聞いた気がする。栗原裕一郎さんに、盗作御殿は建たないんですか、と聞き、建ちません、と返事をされた気がする。お金を払わない悪い出版社をどうにかしてください、夏のコミケに一緒に出ましょう、とも言った気がする。仙台に来る時は連絡してね、といがらしさんに言われてニヤつく姿をナンダロウさんに見られ、馬鹿にされた気がする。一足先に帰られる、いがらしみきおさんとタコ多田さんを目白通りまでお見送りする。いがらしさんはこの日のためにわざわざ仙台から来ていただいたのだ。始終にこやかで優しい方だった。タコ多田さんは、トーク中、客席からツッコミを入れながら笑っていて、帰り道、ブログ読んでるよ、と一声かけてくださった。10時過ぎに解散し、ブルゴーニュ岡島さんにコンビニでアイスを買ってもらって、食べながら家路に着く。あまりの濃さにとても一日の出来事と思えず。家に帰ってからも、ぼーっと、ぼーっと、ぼーっと。